宮本博行展
sign
MIYAMOTO Hiroyuki
宮本博行展の展示風景です。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、作品タイトル「▽ , -」(額・アクリル板)で、作品サイズ400(H)×400(W)×20(D)と9×500×50、「| / -」(アルミパネル・マイナスネジ)で100×100×6、「→←」(コンクリート境界杭 )で1000×100×100です。
正面の壁面です。
「「 ・ 」」(水栓器センサー)で105×105×50です。
右側の壁面です。
左から「[ ・ ]」(フォトアクリル・LED)で124×86×19、「○ ・ ~」(ピンポール・アクリル)で165×∅2 (∅600に12等分配列)、「| ~」(プラスチックの秒針・虫ピン)で20×600(間隔50mm、12等分)です。
入口横の壁面です。
この画像では何も見えませんが、透明な細いアクリルのポールが立っています。
「( • )」(丸形気泡管・アクリルパイプ)で1010×∅11 (下蓋∅30)です。
以上の八点が展示室の展示で、その他小展示室に一点の展示があります。
左壁面の「▽ , -」です。
この作品は床置きのアクリル版と額の二つの要素で成立っています。
アクリル版はこれより内側に立入禁止の標識(sign)を表しています。
美術館などで、使われていますね。
額には赤い逆三角形の印が描かれています。
これも標示、標識で、例えばガラスなどに貼って、そこにガラスがあることを注意、喚起するときに使われています。
左壁面の 「| / -」です。
アルミのパネルにマイナスのネジが三本。
タイトル通りにねじ山が「| / -」になっているという、ナンセンスな作品。
面白いです。
床に立てられた 「→←」で、コンクリート境界杭が二本使われています。
正面壁面の「「 ・ 」」です、
これは水栓器センサーで、手洗いや便器の水洗などで使用されています。
実際に作動していて、手をかざすと上の画像のように赤い光が点灯します。
右壁面の床置き作品「○ ・ ~」です。
測量の標示で使用するアクリル製のピンポールを円形に並べた作品です。
赤と透明のパターンのピンポールが、用途と離れて美しく戯れている作品。
左壁面の「| ~」です。
12本の虫ピンにプラスチックの秒針が吊り下げられています。
秒針は百円ショップの時計を分解して、秒針だけを取り出したものです。
虫ピンの12本は、時計の12時間を意識しています。
(測量のピンポールも12本で、文字盤を模しているように見えます。)
最後は入口横壁面の作品で、細いアクリルパイプのヘッドに水準器が取り付けられています。
そして床にも赤い点が、パイプを囲むように四つ打たれています。
signとは標識、標示、看板、記号などの意です。
宮本さんの展覧会は、日常的に見られるsignを、ほぼそのまま取り出して展示しています。
いわば、レディメイド(既製品)の展示ですが、コンセプチュアルアート(概念芸術)とは若干異なります。
クールな佇まいなのに、どことなく親しみがあります。
遊びのセンスも垣間見られて、堅苦しさがあまり感じられません。
(作品タイトルもヒネリがあって面白いですね。)
わたしたちの日常を振り返ってみれば、sign(標識、標示)に囲まれています。
朝起きてから夜寝るまで、signに従って生活を送っています。
そしてそのsignも、時と共に変化しています。
(水栓器センサーなどいうものは、昔はありませんでした。)
宮本さんの作品に見られるのは、批評性よりも、こういった工業製品のシンプルな美しさや意味です。
それも、さり気ない場所に置かれたsignの、さり気ない美しさや意味です。
これ見よがしの高層ビルの意匠とは対照的な、用途から生まれたミニマルな美しさです。
それをそっと取り出して、画廊の白い部屋に展示しています。
わたしが本展で最も感じたのは、signの赤です。
標識、標示は注意を喚起するためや、目印で使われますので、必然的に赤色が多くなります。
その赤の使い方が、(本展では)とても印象的です。
大袈裟でないのに、とても心に残るのです。
宮本さんの作品を見ていると、『2001年宇宙の旅』のHAL9000や、懐かしい水銀体温計の赤を思い出します。
(余談ですが、そちらの赤は血液の赤とも関係があるかもしれません。)
わたしたちは、signに従って生活しています。
時々signを無視しますが、大概はそれに従います。
しかしそれを、純粋に形や色で見ることはありません。
その意味を、深く考えることもありません。
時には暇人になって、signと付き合うのも一興(必要)ではないでしょうか。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2008年藍画廊個展
会期
2010年2月8日(月)-2月13日(土)
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内