藍 画 廊



宮本浩行展
小事 "trifle"
MIYAMOTO Hiroyuki


宮本浩行展の展示風景です。



画廊入口から見て、正面の壁面です。
左から、作品タイトル「0"」作品サイズ300(直径)×25mm、
「( 0 )」115×75(直径)mm、
「L'oiseau Blue's Can(青い鳥の缶)」138×110(直径)mmです。



右側の壁面です。
壁面の二点、左から「white cross / four of tiles」210(H)×210(W)×18(D)mm、
「blink」100(直径)×10mmです。



左側の壁面です。
左から、「cycle」50×120(直径)mm、
「be」458×458×24mmです。

宮本浩行展 小事 "trifle"は以上の七点によるインスタレーションです。



画廊に入ってまず感じるのは、画廊空間が見事に宮本さんの作品になっていることです。
(画廊の備品である天井の照明用のレールさえも、作品の一部のようです。)
四角い空間に小品が七点。
どれもが、大きさも位置も、定まっています。

ほとんどがモノクロームの作品のなかで、目を引くのが左壁面の「cycle」。
静かに回転する円形のプレートの上の、真っ赤なオブジェ。
これは何でしょうか。



赤い、輪ゴムのようです。
複雑に絡んだ12本の赤い輪ゴム。
時計の文字盤に見えますが、イチゴのデコレーションケーキに見えないこともありません。
日用品の(地味な)存在を逆転させた、鮮烈な色彩の作品です。



額装された左壁面の「be」です。
白い紙に小さな黒点が一つ。
近づいて見ると・・・・。



本物の虫でした。
「天道虫(てんとうむし)」のようです。
さりげなく、視覚の常識や作品の様式を裏切っています。



正面壁面の「0"」です。
円盤ですが、空の雲と太陽がプリントされています。
近づいてみると・・・・。



同じく正面壁面の「( 0 )」です。
回転する円い台の上の、アクリルガラス玉。
上から覗いてみると・・・・。

上記二点の作品は是非画廊でご覧下さい。
作品の秘密を、直に眼で耳でお確かめ下さい。



正面と右側壁面の角に設置された、「L'oiseau Blue's Can(青い鳥の缶)」です。
少し蓋が開いた、スッピンの金属の缶。
何が入っているのかと近づいてみると、鳥のさえずりが聴こえてきます。
タイトル通り、これは青い鳥の缶です。



右側壁面の「white cross / four of tiles」です。
直訳すれば、白い交差/4枚のタイルで、タイルの展示に見えます。
作品を横から見ると、アクリル板が二枚重ねてあります。
ということは・・・・。

この4枚のタイルは、写真か、もしくは精密に描かれた画像に違いありません。
危うく騙されるところでした。
視覚と日用品の隙間をついた、個人的には最も好きな作品です。



最後は右側壁面の「blink」です。
blinkはまばたき、明滅の意です。
小さな白い円盤のどこにblinkがあるか。
これも画廊でお確かめ下さい。



鮮烈な赤の作品を除けば、会場はモノクロームの世界。
天井の蛍光灯から照らされた空間は、静かな物語に満ちています。
小事とは、わずかなこと、些細なことです。
その小事が、わたしたちに語りかけてきます。

展示された小品の多くと支持体は、幾何学的な円と方形で成立っています。
モノクロームの色彩と相まって、無駄のない合理的な体裁です。
しかし、作品からは小さな囁(ささや)きが聴こえます。
その囁きは体裁とは違って、形の定まらないものです。
空間の中で、遊ぶように漂っています。

日常、日用は固定観念が支配しています。
それはそれで、大事なことです。
生活とは、固定観念の上で送られるものだからです。

大事も大事(?)ですが、時には小事にかまけることも大切です。
わずかなこと、些細なことに目を凝らし、そこに見える景色に見入り、聴こえる音に耳を傾けましょう。
そうすれば、退屈な日常もまんざらでないことに気が付くでしょう。
固定観念や常識の陰に、素敵な物語が詰まっていることに、感動するかもしれません。

ご高覧よろしくお願い致します。



会期


2008年6月2日(月)ー7日(土)


11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内