藍 画 廊



上野茂都展
-大理石・砂岩による新作-
UENO Shigeto

上野茂都展の展示風景です。

画廊内の通常より照明が落された空間に、二十三点の彫刻作品が展示されています。

前列左から、作品サイズ（三段組の下から）130(H)×180(W)×260(D)mm/180×120×178mm/47×92×130mm、
（二段組の下から）70×70×180mm/85×170×215mm、
300×145×145mm、（二段組の下から）85×170×195mm/70×70×180mm、300×145×145mm。

前から二列目左から、（二段組の下から）140×170×235mm/50×210×285mm、315×145×140mm、315×1500×150mm、（二段組の下から）260×145×205mm/40×215×230mm。

前から三列目左から、370×200×192mm、350×165×155mm、（二段組の下から）65×405×265mm/335×365×195mm、340×215×185mm、335×225×183mm。

前から四列目左から、340×318×150mm、382×198×210mm、378×235×220mm、360×284×145mm。

前から五列目左から、500×220×185mm、535×220×155mm、587×250×200mm、530×225×190mm、512×220×175mmです。

以上が画廊内の展示で、その他道路側ウインドウに三点の展示があります。
作品の素材は砂岩、大理石、石灰岩の三種類があります。

最前列の作品二点です。
亀が三匹、重なっている像と魚の像です。
亀が砂岩で、魚は大理石です。

前列中央の家の像。
石灰岩で、この家の門が、上野茂都ワールドの入口ではないかと思います。

二列目の猫と人物像。
上野さんで一番多いのは人物像ですが、猫の像も数多く作っています。
大理石の猫と人。
シンプルですが、質感と色が、とっても良いですね。

三列目の中央に、ドンと控えている像（大理石）。
山のような人（仏）のような、どちらでもあるような、像です。

四列目の二点、二点とも大理石です。
左は屏風岩（？）で、右は花ないしは人物像でしょうか。

最後列の五重塔（大理石）と人物像（砂岩）です。


展示をよく見ていると、並べ方に法則があるようです。
像の数は奇数、偶数の順に列ができています。
列の中の像の種類は、ほぼ対称になっています。
例えば二列目ですと、中央が人物で、その左右に猫の像。

全体に中心といったものはありませんが、前列中央の家と三列目の山（人、仏）は、存在感があります。
その後の人物を結ぶ線は、太いラインのように見えます。
その他、斜めの列にもある種の縁（えん）のようなものがあって、見飽きません。

像の種類を大別すると、人物、仏、動物、植物、自然、家になります。
人物像が多いのは、上野さんが人間であり、見る人も人間だからです。
ここにあるのは、世界です。
世界のすべてを、単純化（余分なものを削ぎ落として）して、世界の在り方（本質）を提示しています。

しかし何とまぁ、素敵な世界であることでしょうか！
上野さんの言葉ではありませんが、「福」を授けられた心持ちです。
とっても、幸せな気持ちになります。
この像達の後ろ姿もご覧下さい。

なんでこんなに幸せな心持ちになるのか。
その秘密を二三探ってみましょう。

像には、自己主張といったようなものがありません。
ただそこに、穏やかに存在している。
自分の場所を得て、満足そうに佇んでいる。
その在り方が、良いんですね。

多くの像を群像と呼びますが、群像には方向性がありません。
方向性がないから、ぶつかることもありません。
像に角がないのは、その証拠です。
仲良し、というわけではありませんが、ここには対立が皆無です。
みんながみんな、それぞれの生き方をしていて、ぶつからない。

これが理想の世界かといえば、そういうことではありません。
世界とは、もともとこのようなものでした。
大昔の人間はそれを知っていて、世界の在り方に逆らわないように生きてきました。
人間の進化、進歩を取り除けば、世界は今でもこのようなものなのです。

素材（砂岩、大理石、石灰岩）の混在も、世界の多様と調和に一役買っています。
素朴な味と変化、巧みな技と見ました。
お見事です。
投げ銭の一つも、放りたくなりました。

今回の展示紹介の前に、上野さんの彫刻小論を書かせていただきました。
その中で触れられなかったことが一つあります。
それは、上野さんの人柄です。
その彫刻と同じように、とても誠実なそれです。
彫刻のどこかトボけた味も、上野さんの人柄にはあります。
これ又作品同様、得難い資質と思います。

ご高覧よろしくお願いいたします。

上野茂都展/テキスト

2005年藍画廊個展
2006年藍画廊個展

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