藍 画 廊



清岡正彦展
「風景に還るII」
KIYOOKA Masahiko


清岡正彦展は二週間の開催で、展示は前半一週間と後半一週間で異る二部構成になっています。
今回は後半の「風景に還るII」をご紹介いたします。
前半の展示に大きく手を加えたインスタレーションです。



画廊の床には濃いブルーのカーペットが敷き詰められ、(画廊入口から見て)左側の壁面方向に、立体が砂の上に設置されています。
作品タイトル「他者の温度」で、サイズは可変、
木材、石、FRP、ポリエステルパテ、エマルジョンパテ、ラッカー塗料、ウレタン塗料、ガラス、パラフィン、砂、カーペット、ボールチェーンなどを使用しています。



左は、入口横右の壁面の額装作品です。
「どうしても閉じてしまうことのための景色」で、サイズは可変、木材、ポリエステルパテ、ウレタン塗料、パラフィン、額縁などを使用しています。
画廊内の展示は以上ですが、前半同様「近くて、遠景 」も画廊のどこかに展示されています。
右は道路側ウィンドウの展示です。
「不在の島へII」で、サイズは可変、木材、石、FRP、ポリエステルパテ、エマルジョンパテ、ラッカー塗料、ウレタン塗料、ボールチェーンなどを使用しています。

わたしの予想では、ここまで展示が変化するとは思いませんでした。
その大きな要因は、床に敷かれたカーペットと海岸から搬送された砂です。



カーペットはこのように全面に敷き詰められていますので、靴を脱いで、インスタレーション空間に入ることになります。
波のようなパターンがついた、濃いブルーのカーペットと砂。
海、ですね。



砂の部分です。
砂は平坦ではなく、海岸の砂のように盛り上がったところもあります。
砂に見え隠れしているのは、浴室などで見かける円い排水金具です。



インスタレーションのメインとなる「他者の温度」です。
前半の
「引き合いの場所」のパートを大幅に改変した作品です。
この展示が前半のイメージを最も引き継いでいて、逆にその変化に興味がいきます。
スタイリッシュでクールだったガラステーブルは、ガチガチに凍てついて、コールドになってしまいました。
静かな凪(なぎ)の景色は、氷海の荒々しい景色に。
氷の海の間には、あの小さな白い舟も浮かんでいます。
(舟に付いていた鎖は中途で断たれています。)


青い海と砂浜。
その上部に展開されている、凍てついた海の光景。
ガラステーブルの上の光景は、箱庭ないしは枯山水のような体裁。
二つの異る天候が、お構いなしに同居しています。

そう、お構いなしが、清岡さんの作品の特質です。
常識的な見方を無視して、風景を自分の視点で再構成する。
再構成の鍵になっているのは、やはり水です。
(自然と人の)世界を循環している、水です。

極く簡単にいってしまえば、水の循環で世界は成立しています。
海の水が蒸発して雨を誘い、雨が降れば、川になって海に注ぎ込む。
その過程で、生物は各々の生活を成り立たせています。
水の循環に変異があれば、それは気象の変化として現われ、生物に影響を与えます。

清岡さんの作品では、マクロな水とミクロな水が入り組んだように構成されています。
自然界と人間界の水が、唐突に出会って、風景を形作っている。
海と浴室が、同じ地平で風景になっています。
そこが見る者を混乱させる原因で、清岡さんの作品世界の入口になっています。

小さな白い舟は、清岡さんの分身です。
舟は航海しているようで、留まっているのかもしれません。
世界を見て歩いているのではなく、一つの地点から風景を眺め続けているのではないでしょうか。
風景の変化を眺め、その風景の奥底に行きたいのが、あの小さな白い舟の意味と想像します。

風景を再構成する時、清岡さんによって使用される材料は、自然も人工も等価です。
海岸の砂もインテリアショップのガラステーブルも等価。
そこに違いはありません。
しかし見る者にとっては、水の唐突な出会い同様、違和感と奇妙な統一感を覚えます。
それこそが、清岡さんの眼目であり、「風景に還る」方法なのです。

ご高覧よろしくお願いいたします。



会期

2007年8月6日(月)-8月18日(土)

第1部:「風景に還るI」 8/6〜8/11
 第2部:「風景に還るII」 8/13〜8/18

日曜休廊

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内