島田恒平展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面の壁面です。 出品作品はすべてタイプCプリントの写真で、アクリルでマウントされています。 サイズも全作品共通で600×760mmです。 左から、 on the atlas #02、 on the atlas #06、 on the atlas #12。 |
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入口横右の壁面です。 on the atlas #04。 |
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左の壁面です。 on the atlas #09、 on the atlas #01。 |
それでは、作品を壁面ごとにご紹介したいと思います。
まずは左の壁面から。
住宅地の風景ですね。
特に変わった風景ではありません。
日本中、どこにでもあるような風景です。
(どちらかといえば、地方ではなく都市部の住宅地に見えます。)
画廊の壁面に島田さんの記したテキストが貼付してあります。
それをここで読んでみましょう。
曇天の柔らかな光に包囲されている町を歩く。
目の前に、電線や、捩れた草木や花、レンガやトタンやコンクリートの壁が、風景から断絶したように突然現れ、立ち止まりその細部をなぞるように目を凝らす。
けっして見られることのなく、記号にもならず、言葉に変えられる事の無い細部から成り立っている、語られない風景の柔らかな光を、暗い箱に忍び込ませる。
世界は、言葉の外に在る。
撮ることは、世界を分断し、埋もれた言葉を見いだすこと、世界を言葉の前に置くこと。
画像の中の埋没した言葉は、反響しあい重なりあい連なっていき、新しく語られる事を待っている。
まるで、記憶の断片が繋がり、突如として奇妙で鮮明な夢を見るように。
(改行は原文と異ります。)
撮影条件として、曇天と匿名性のある住宅地があるようです。
匿名性とは、象徴的(シンボリック)な建造物や特異なモノがないことを指しています。
正面の壁面です。
空をご覧いただければ分るように、やはり曇天の撮影ですね。
作品はカラープリントですが、曇天で撮ったために色彩が沈んでいます。
その色相が、景色に何とも言えない表情を与えています。
風景が、あたかも語り始めているような・・・・。
入口右横の壁面です。
この作品は被写体の中心が草木で、他の作品と異りますが、やはりありふれた住宅地の風景には変わりありません。
しっとりとした草木の緑が眼に優しい作品です。
写真とは、風景(世界)の再構築かもしれません。
風景を分断し、言葉にならない細部から言葉を紡ぎだし、新たに世界を語る作業かもしれません。
ありふれた風景が語りだした時、その新鮮な現実には驚きがあるはずです。
いつも見ているのに、見たことのない風景を見たような驚きが。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2002年藍画廊個展