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純白/サイケデリックヴァージョン


朝起きたらママンが死んでいた(カミュ「異邦人」)のではなくて、眼がオカシイ。
わたしは部屋の窓を開けてビックリしました。
景色がいつもと全然違って見えるのです。



午前七時の空は、こんなにボケボケだったでしょうか。
色合いも違う!
朝でもないし、昼でもないし、夕方でもない、空。
わたしの眼が、オカシイのです。
もしかしたら、オカシイのは眼ではなくてアタマかもしれません。

パニックに陥ったわたしは、懸命に心を落ち着けて原因を探りました。
眼か脳のどこかの血管が切れたのか、それともまだ目が覚めていないのか。
あるいは、何かにアタッたのか。
昨夜のメニューを思い出すと、心当たりが。

知人が届けてくれた山菜を、わたしは昨夜の夕食でシコタマ食べた。
山菜には稀に食用によく似た毒性のものがあるそうです。
シロートが無闇に山菜を採って、その毒性のあるものを持ち帰ってしまう話を新聞で読んだことがあります。
昨夜の山菜に、その毒性(幻覚作用)のあるものが混じっていたに違いありません。
幸いに今のわたしは眼がオカシイだけで他には異常がありません。

短略的な結論に達したわたしは、デジカメを持って外に出ました。
この異常な光景を記録しようと思ったのです。
(異常なのはわたしの眼だけでカメラは正常ですから、撮影した画像は普通の風景にすぎません。その時のわたしは、やはりアタマもヤラれていたのです。ですから、以下はわたしの記憶による光景を基に画像処理したものです。



わたしが出かけた先は、近所の工業団地にある結婚披露宴施設です。
前回iPhotoでご案内した場所です。
あの時とは逆周りに、エントランスの方から教会に行ってみました。
早朝のエントランスはあの時と同じように静まり返っていますが、建物は純白が消えて、ベージュになっています。
道路の中央に引かれた白いラインも、手前はなぜかブルーです。
入口に向かってみると・・・・。



ドアのゴールドが、レッドになっていました。
そして瞬時のうちに、壁はベージュから元の純白に。
眼は、視点を変えたり、瞬(まばた)きをすると色が変化してしまいます。
これは、相当強い幻覚作用のある山菜を食べたようです。



エントランスから建物の左に廻ると、ガラス越しにテラスや待合室が見えます。
上はその手前の庭です。
グリーンの芝生がレッドで、芝生の向こう側左にはテラスへの入口が。
入口には、何かピンクのものが見えます。



庭とテラスを仕切る壁に近づくと、今度は薄いミントグリーンのテラスに変化しました。
壁は白からベージュのようなピンクに。
わたしは、マジカル・ミステリー・ツァーのど真ん中にいるのでしょうか。



レセプションルームの長い背もたれのイスに眼の焦点を合わせようとすると、窓に映った外の景色が邪魔をして、ボンヤリとしか見えません。
そのうちに部屋の内側と外側の景色がゴッチャになって、収拾がつかなくなってきました。
今いるのは建物の中なのか外なのか、判然としません。
一度眼を閉じて、窓から眼を逸らし、レセプションルームや待合室の前を通り過ぎて建物の角を教会の方に曲がりました。



芝生はグリーンで建物は純白、あの時の中庭です。。
しかし、空はパープル。
送電塔がシルエットのように空に浮かんでいます。
なおも前に進んであのシンボルの白い塔を見上げると。



一瞬のうちにレッドの空に変化してしまいました。
景色の色も、エントランス辺りに比べると濃くなっているような気がします。
この頃になると、わたしはすっかり眼の変調を楽しむ余裕ができ、瞬きをしたり視点を変えて景色を見ていました。
色調のドラスティックな変化に、時の経つのを忘れてしまいました。
それ以前に時間の感覚も狂っていて、部屋を出てからどのくらい時間が経っているのか分かりません。
数時間も経っているような気がするし、数分しか経っていないような気もします。



隣の、教会です。
モダーンでロマンティックな教会でしたが、今見えるのはちょっと不気味な様相。
入口の両側の金属モビールが輝きを失って、怖い感じです。
教会の中に吸い込まれそうな恐怖を感じて、慌ててそこを背に向けて歩き出しました。



道路に出ると、もう一度エントランスの方に向かい、手前の駐車場で一休み。
遠くの山と空を見ていると、恐怖心が薄らぎ、心が落ち着いてきました。
眼を細めても、見開いても、景色はボヤけたままですが、そこに敵意は見受けられません。
いつもとは違う景色ですが、いつもと同じようにわたしを受け入れてくれました。
わたしは来たときよりはユックリとした歩みで、家の方角に足を進めました。


これでわたしのサイケデリックな旅は終わりです。
この状態(眼の変調)はこの後数時間続き、午後には正常に戻りました。
特に後遺症といったものもありません。
わたしは山菜を採ってきてくれた知人に、密かに感謝したのでした。


注:そのような山菜はどこで採れるのか、と興味を持たれた貴方。本気にしないで下さいね。ただ単に画像処理ソフトで遊んだだけですから、悪しからず。