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「探偵物語(84)」


「探偵物語(83)」の続き

探偵の仕事では、事務所に居る時間より、外の方が圧倒的に長くなります。
ある意味、営業マンと同じです。
地方の場合は、探偵も営業マンもクルマ移動が原則です。
ですから、休憩も事務所や会社に戻る時間が惜しい時は、適当な場所で休みます。

そうはいっても、ファミレスやコーヒーショップに度々入るわけにも行きません。
そうなると適法に駐車出来る場所を探して、クルマの中で休むことになります。
食事を採ったり、仮眠をする場合もあります。
そういう場所をわたしも幾つか知っていて、仕事の合間に利用しています。



ここはK市の東端にあるスポーツ公園です。
公園には小さな庭園も含まれていて、その駐車場がわたしの休憩場所です。
上のグランドはサッカーも出来る広さですが、老朽化しているせいか、ほとんど老人のゲートボール専用になっています。
この風景も打ち棄てられた鉄のローラー以外、何もありません。
しかし風景は空漠ではありません。
人の気配というか、人が介在する何かがあります。
それが前のページでご覧いただいた風景との大きな違いです。



さて、このスポーツ公園をご紹介したのは、風景だけの問題ではありません。
上の白いスチールのベンチを見ていただきたかったからです。
白い、貴婦人のようなベンチ。
わたしは、マジでそう思っています。
このベンチがグランドを囲むように7〜8台置かれています。

さきほど電柱で「?」と思われた方は、この貴婦人にも「?」が出たと思います。
このどこにでもある白いベンチのどこが、貴婦人なのかと。
それは、(これも又個人的感覚ですが)、匿名的なシンプルなデザインと、置かれた場所の所為です。
貴婦人に見えない人の方が正常で、わたしの方が特異なのは承知ですが、わたしにとってはやはり貴婦人なのです。



白い貴婦人の後ろ姿です。
後ろ姿にも、気品がありますね。
こういった大量生産の無個性な規格品は、風景の重要な一部です。
そこにあっても目に入らないようなもの。
それをあえて眺めていると、意外な表情や美に気が付きます。



ペアの貴婦人です。
背後の大木とグリーンのネット。
地面の土と砂も、白い貴婦人を引き立てています。
もう1枚、ペアの写真をご覧下さい。



わたしは、相当に偏向した風景の見方をしています。
それが探偵業の副作用(?)なのか、それとも個人的な資質なのか。
多分、その両者でしょう。
なぜなら、探偵業とは、普段見慣れているものから何かを捜す職業だからです。
特別なものを捜すわけではありません。
普段見慣れているものの中から、糸口を見つけ出すことが重要なのです。
見えているようで見えていないもの、それを捜すのが探偵の仕事です。
この公園から、白い貴婦人を捜し出すように。



これは、オマケです。
わたしの住居にあるイス二脚です。
あれこれ理屈をつけましたが、結局、イスやベンチが好きなのですね。
特に、風景の中にあるイスやベンチに。