藍画廊

笠木絵津子展
『私の知らない母』出版記念新作展
KASAGI Etsuko

笠木絵津子展の展示風景です。



各壁面の展示です。



画廊入口から見て、 左側の壁面です。



正面の壁面です。



右側の壁面です。



入口横の壁面です。



小展示室の壁面です。

以上の5点で笠木絵津子展は構成されています。
作品の詳細をご覧下さい。



左壁面の作品です。
タイトル「壽山より台湾高雄市街展望1928–2003」(過去と現在の写真によるデジタルイメージをインクジェットプリント)、サイズは70cm x 510cmです。



正面壁面の作品です。
「1941年、満洲国哈爾浜市にて、17歳の母と松花江を望む」(写真とドローイングによるデジタルイメージをインクジェットプリント)で150cm x 183cmです。



右側壁面の作品です。
「1942-46年、満洲国間島(延吉)市の間島高等女学校前にて、悲痛な表情の祖父」(過去と現在の写真によるデジタルイメージをインクジェットプリント)で110cm x 400cmです。



入口横壁面の作品です。
「1937年頃、 満洲国撫順市の撫順プールにて、13歳頃の母と13歳の私」(過去と現在の写真によるデジタルイメージをデジタルCプリント)で120cm x 180cmです。



小展示室の作品です。
「4次元時空間に浮かぶ古い家族写真たち」(写真とドローイングによるデジタルイメージをインクジェットプリント
)で66cmx 90cmです。


笠 木 絵 津 子『 私の知らない母 』
出 版 記 念 新 作 展

2019年 6月10-22日、藍画廊 (東京銀座)

「私の知らない母」シリーズは、戦前の東アジアに生きた私の母の半生を、古い家族写真と私が現地に赴いて撮影した現在写真を交錯させて描いたデジタル作品シリーズである。作品のほとんどは母が死んで10年の間に制作し発表した。おばたちへのインタビューに始まり、調査、取材旅行、パソコン作業、展示発表、の反復に明け暮れた10年であった。
そして、母が死んで20年となった昨年、「私の知らない母」を豪華本で出版することにした。時代錯誤の重厚長大本とするのは、私が死んで宇宙の素粒子となった後も、質量と体積と強情を持ってこの世のどこかの本棚に存在し続けて欲しいと願うからである。
私が死んで100年後の未来にこの本を発掘しページを開いた若者に昔こんな家族があったと知ってもらいたい、20年前に私が祖父のアルバムを開いてアインシュタイン以来の世界観変換を迫られたように。作品集の余白に制作時の記憶や記録を綴ったテキストを書き始めたり、パソコンの中に眠っていた未完成作品を完成させたりするうちに時は令和に突入、出版記念展を先に開くこととなった。ここでは新作16点の中から5点を大型プリントで展示する。因みに、第一作目を除いて「私の知らない母」シリーズの全ての大型インクジェットプリントは藤原岳志氏(現在、株式会社ハプコ所属)に制作していただいた。深く感謝します。
作品集の発売は9月の予定です。会場に見本を設置しましたのでご自由にご覧ください。

2019年 6月 6日
笠木絵津子
現代美術家

家族が現存している時、人は自身の家族の過去にはあまり興味が行きません。
笠木さんの場合、お母さんが亡くなって10年目に、お母さんの足跡を辿る旅が始まりました。
そしてその旅に一区切りがついてしばらく経った時、今度は(同じく亡くなった)お父さんを巡る旅に出かけました。
この旅は文字通りの旅で、ご両親の残した足跡を手がかりに現地に飛び、撮影し、資料を収集しています。
このお気持ちはわたしにも良く解ります。
わたしも両親を亡くした後、わたしが生まれる前の両親の生育にとても興味が湧きました。
それは親子の間のどこかに欠落があって、それを埋めようとする気持ちかもしれません。
もしくは愛憎があって、そのルーツを知りたいという欲求なのかもしれません。
何れにせよ、その心の動きは、家族とは、親子とは何かという大きな問いに繋がり、ひいては自分自身の立脚点を探る旅になります。

巨大なインクジェットの画面、圧倒されます。
カラー(現在)とモノクロ(過去)が入り混じり、精細な画像と荒い網点の画像の継ぎ接ぎがあり、明らかに合成したと思われる分割の跡がある画面。
それは笠木さんの脳内のカオスと激情の濃さの現れのように見え、同時に崇高な祈りのようにも見えます。
そのアンビバレントな感情を呼び起こすのが、笠木さんの作品の特質ではないでしょうか。

本展は作品集『私の知らない母』の出版記念新作展です。
作品集は予定より遅れて9月に出版になりましたが、作品同様に本のディテールにも厳しい笠木さんの熱意の結果です。
印画紙にプリントされた古写真から旅が始まり、デジタルカメラで足跡をトレースして、コンピューターのモニターでそれらを結合して、又紙の長大作品集に戻る。
それは生と死を巡る円環構造のようであり、作品集はアナログとデジタルを習合した旅と語りの結晶に違いありません。
そして、笠木さんの個人的な旅はそれを手に取った不特定の誰かに引き継がれるのです。

ご高覧よろしくお願い致します。

作品リスト
作品解説1
作品解説2

2018年藍画廊個展
作家Webサイト


展覧会初日には笠木絵津子さんと光田由里(美術評論家)さんのトークショーが行われました。


 

会期

2019年6月10日(月)ー22日(土)
日曜休廊
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)

会場案内