藍 画 廊


山本まり子展
「心地」
YAMAMOTO Mariko


山本まり子展の展示風景です。



各壁面の展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左壁面です。



正面の壁面です。



右側の壁面です。

以上の3点が展示室の展示で、その他小展示室に9点、事務室壁面に1点の展示があります。
作品の詳細をご覧下さい。



左壁面の作品です。
タイトル「雪をゆく」(木、紙、アクリル、胡粉)で700×1825mmです。



正面壁面の作品です。
「稜線を辿る」(木、紙、アクリル、胡粉)で1125×1610mmです。



右側壁面の作品です。
「心地」(木、紙、アクリル、胡粉)で420×590mmです。




小展示室の作品です。(一部は写っていません)

<作家コメント>

「心地」
いつか見たものと
見たこともないものと

そうするのでしかなく
それでも懸命に

見えていないもののために
ただそれだけなのかもしれない


山本さんの作品は複雑な形式を持っています。
絵画としては異例の厚みがあり、側面まで描かれています。
小品になれば、それは立体と言っても良いほど絵画の正面性を無視しています。
パネルに紙を千切って貼り、絵具で描き、又紙を千切り、そして又描く。
プロセスに千切るという偶然性を取り込んで、予定調和を回避しています。
そしてそのプロセスが手慣れてしまうと、(今回のように)筆の線を導入して新たな道筋を作ります。
展示にも細やかな神経が使われ、空間と作品の関係、見やすい配置に格段の拘(こだわ)りがあります。

そのようにカテゴライズが難しい作品ですが、わたしは今日的な絵画として接しています。
それも光をテーマにした絵画として鑑賞しています。
光とは何か。
深淵なテーマで、特に近代絵画以降は主要な画題であったと思います。
写真の発明以降、現象を精緻に写すことから、現象の理(ことわり)に興味が移行したからです。

最近、光をテーマにしたノンフィクションを読みました。
北極の冬、太陽が上らない四ヶ月を一人の探検家が一匹の犬と橇を引いて歩いた記録です。
角幡唯介『極夜行』がそれで、著者は極寒の中、暗闇と月の光だけで過ごします。
まず精神と身体に変調があらわれ、鬱と胃痛に悩まされます。
そしてその状態に慣れてくると、今度は月の光が風景を撹乱し始めます。

それはモノとモノの境が消滅して、今まで自分自身を支えていた秩序が崩れています。
つまり、世界が混沌に包まれ、生きるための思考が困難になっていくのです。
(逆説的に)太陽の光が如何に生存の基盤になっているかが、混迷の中で明らかになります。
諸宗教が光を教えの中核に置くのは、人間の肉体的生存だけではなく、精神的な安寧に深く関与しているからです。

(詳細は省きますが)そのような精神的危機を乗り越え、四ヶ月ぶりに見た太陽。
わたしは山本さんの鮮やかな絵画を見た時、この感動的なシーンを思い出しました。
色が複雑に絡み合い、事物が休みなく運動している様子。
それは原初の光のようで、生きることの始まりを表しています。
世界を世界として認識できる喜びと心が着地点を見つけられる安堵。
山本さんが本展のタイトルに<心地>を付けたのは、そんな思いもあったのではないかと想像します。

ご高覧よろしくお願い致します。

プライスリスト1
プライスリスト2

2000年藍画廊個展
2003年藍画廊個展
2005年藍画廊個展
2009年藍画廊個展
2013年藍画廊個展
2016年iGallery DC個展

2018年3月5日(月)ー10日(土)
11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)


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