藍 画 廊



山本まり子展
心に、そう
YAMAMOTO Mariko


山本まり子展の展示風景です。



画廊入口から見て、正面の壁面です。
作品サイズは1220(H)×1900(W)×40(D)mmで、木・紙・アクリル・膠・胡粉を使用しています。



入口横の壁面です。
作品サイズは1303×970×24mmで、木・紙・アクリル・膠・胡粉を使用しています。
展示室の展示は以上の2点で、小展示室に6点、事務所壁面に1点の展示があります。



画廊の入口ドアを開けて中に入ると、正面には大きな平面作品が展示されています。
左右の広い壁面には作品の展示がありません。
正面の作品に近づいて、振り返ると、そこにもう1点の展示があります。
都合2点の、大胆な展示です。

上は正面壁面の作品で、多くの人は空をイメージすると思います。
山本さんのお話では、特に空を意識して描いたものではないそうです。
しかし作品のイメージは限定されていませんので、想像したものから作品に入っていくことは自由です。
わたしも、自分が想像した青空から作品世界に入りました。

通常よりも低い位置に展示された、作品。
木のパネルにアクリル絵具で描かれていますが、紙も使われています。
画面に近づいて良く見てみると、部分的に薄い紙が貼られている様子が分かります。
この紙は、画面に隠し味のような効果を与えていますが、もっと重要なのは、制作過程における役割です。
山本さんにとって、描くことと紙を貼ることの、交互の有機的な作用が、作品を作っていくことの原動力になっています。
それがあって、このような、誰にも描けない山本さんの優れた作品が生まれてきます。



入口横壁面の作品です。
これも低い位置に展示されていますので、見る方も、自然と重心が低くなります。
正面壁面と呼応するような場所の展示ですが、対になっている感じとも違います。
この作品はこの作品で独立していて、なおかつ正面の作品と同じ脈を打っています。
山本さんの平面作品は、厚み(奥行き)のある箱のようなものが多いのですが、これは例外的に薄い作品です。
その薄さが壁面全体との関係で、独自の作品空間を形成しています。



左は事務室壁面の作品で、作品サイズ120×150×28mm、右の二点は上から、69×83×30mm、72×92×16mmです。
いずれも木・紙・アクリル・膠・胡粉を使用しています。
山本さんは、大きな作品と同時に小品の制作にも意欲的です。
以前は組み合わされた展示も為されましたが、今回は独立した展示になっています。

前述したような箱状の作品で、厚みも様々です。
立体、平面といった既製の形式に囚われない作品ですが、それは結果であって、意図ではありません。
作りたいものを作っていったら、自然にこのような形の作品になったと思います。



小展示室の台の上に展示された作品です。
左は作品サイズ25×25×20mm、右上は38×60×25mm、右下は45×55×25mmです。
この3点も木・紙・アクリル・膠・胡粉を使用しています。
左の箱に入った小さな小さな作品、展示室の大作と同じ血が流れていて、決してミニチュアではありません。
その作品世界の大きさは、同じです。




上は山本さんのご友人の希望で、画廊中央でイスに座っての観賞です。
あたかも映画を見ているような光景です。
恐らく、作品の展示位置が低いので、じっくり座って観賞したいということですね。
その気持ち、良く分ります。

画廊に入った瞬間は、展示が1点しか見えず、白い壁面と床と淡い色彩の作品で、眼の焦点が合いません。
浮遊しているような感覚で、それはそれで気持ち良く感じます。
しばらくすると、眼が慣れてきて、今度は作品とそれを包む空間に圧倒されます。
その圧倒のされ方は、驚異ではなく、同期(シンクロナイズ)です。
作品と作品のある空間が、見ているわたしの何かと同期しているのです。

展覧会のサブタイトルは「心に、そう」です。
多分、わたしが同期しているのは、このタイトルに表されているような、心の状態です。
「心に、そう」は、優しさではありません。
そうではなくて、最も深い信頼のようなものだと思います。

人が生きていく上で、孤独は避けられませんが、それを溶かしてくれるのが信頼です。
その信頼の関係は様々で、親子であったり、夫婦であったり、友人であることもあります。
関係が何であれ、深い信頼は、人の心の奥深いところで安らぎをもたらします。
安心して、生きていくことを支えてくれます。

作品の描かれた形象(青空)から入ったわたしは、気が付くと、そんなことを考えていました。
わたしが深い信頼と表した言葉は、見る人によって異なると思います。
それでも、作品が精神の深いところと同期していることに疑いはありません。
感動ではなく、同期して、心を穏やかに動かすのです。

ご高覧よろしくお願いいたします。


2000年藍画廊個展
2003年藍画廊個展
2005年藍画廊個展



会期

2009年6月8日(月)-6月13日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


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