藍 画 廊



大森愛展
OHMORI Ai


大森愛展の展示風景です。



各壁面の展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左の壁面です。
左から、タイトル「fleurs I」で、ボールペン・トレーシングペーパー・画用紙を使用 、「fleurs II」でボールペン・トレーシングペーパー。
中央の台座の作品は「bed」で、写真326枚で構成されています。



正面の壁面です。
「remplissage I」でボールペン・トレーシングペーパー・画用紙を使用しています。
手前の台座の作品は上で紹介した「bed」です。



右側の壁面です。
2点共「untitle」でボールペン・トレーシングペーパー・画用紙を使用しています。



入口横の壁面です。
「untitle」でボールペン・トレーシングペーパー・画用紙・色鉛筆を使用しています。

以上の7点が展示室の展示で、その他小展示室に1点の展示があります。



左壁面の「fleurs I」です。
fleursとは花のことですが、タイトルはすべて制作後に付けられています。
さてこの作品、上の画像ではよくわかりませんね。
クローズアップをお見せしましょう。



トレーシングペーパーに白いボールペンで線(ライン)が無数に描かれています。
トレーシングペーパーのバックには画用紙が敷いてあります。
線の描く模様は葉脈にも見えるし、マスクメロンの皮の筋のようにも見えます。
あるいは極細のレース模様にも見えるかもしれません。



同じ左壁面の「fleurs II」と部分のクローズアップです。
この作品はトレーシングペーパーに黒いボールペンで描かれています。
左のクローズアップでお分かりの通り、画面が細い線でほとんど隙間無く埋められています。
根気のいる仕事ですが、強迫的な印象はまったく受けません。



正面壁面の「remplissage I」です。
remplissageとは、補充とか充填といった意味です。
細い線のドローイングは、(恐らく)方法論は同じなのに、1点1点異なる表情を見せています。



右壁面の作品とその部分のクローズアップです。



展示室の中央に置かれた台座の上の「bed」です。
ご覧の通り大量のモノクロ写真が積まれています。
この作品は、従来の大森さんの作品の延長線にあるものです。
タイトル通り、寝起きのベッドの様子を定点観測で毎日撮影したものです。
326枚ですから、326日分のベッドの様子です。



小展示室の作品で、タイトル「faint」で、鏡・油絵具を使用しています。
小さな鏡の表面を油絵具で塗りつぶしてありますが、細い線(溝)が横に等間隔に引いてあります。
faintとは、色・音・光などがぼんやりした、ほのかな感じを示す形容詞です。
ボールペンのドローイングとは対照的なミニマムな作品ですが、共通する感覚があります。
その一つは、繰り返す、反復するといった行為です。


大森さんの以前の展示は、ビニールの保存パックのインスタレーション、写真を本にしたインスタレーション、そして写真をアクリルでマウントした作品でした。
今回は比較的オーソドックスな平面(ドローイング)と写真の展示です。
描くという行為は新たな転換点ですが、作品の概念は継続されています。

展示の中心になっているのはボールペンのドローイングですが、これは実際に画廊で見てみないとその詳細が分かりません。
掲載した画像では、単なる概略の域を出ません。
画面に近づいて、(恐ろしく)細かく描かれた線の映し出す模様を眺めていると、そこに時間の堆積が浮かび上がってきます 。
それは日々の行為の軌跡ですが、その堆積は、一つの絵として見ることもできます。
いや、絵として見た方がとても興味深いと思います。
この不思議な絵は、空間と時間が寄り添ったり、せめぎ合ったりしています。

毎朝寝起きのベッドを撮影した写真集。
それと同じように、毎日同じ道具を使って細かな線を引き続ける。
ベッドの様相が毎朝違うように、線も日々違う痕(跡)を残す。
そしてそれが1枚のトレーシングペーパーを埋めたとき、そこに絵が出現する。
その絵は、ある意味で自画像です。
自画像は何種類もあって、それぞれが違います。
そこが、この不思議な絵の面白さであり、特異性です。

わたしはわたしでしかないのですが、そのわたしを確(しか)と捉えることは難しい。
なぜなら、わたしは意識的にしかわたしを見られないからです。
無意識のわたしもわたしであって、そのトータルな視点が、本来のわたしのはずです。

ベッドの寝具に無意識(寝相)が作る皺や痕跡。
その集積は不確かなわたしにある輪郭を与えてくれます。
それと同じように、一定のモチーフも持たない線だけのドローイングは、知らず知らずに無意識を引き出します。
意識的に描きながら、そこから生まれる無意識と交差して、絵はできあがっていく。
それは大森さんも予想しなかった絵であり、大森さんというわたしかもしれません。
気の遠くなるような線の交錯を見ながら、一方で、わたし(筆者)はそのように絵と対話いたしました。

ご高覧よろしくお願い致します。

2006年藍画廊個展
2007年藍画廊個展
2008年藍画廊個展

 

会期

2010年10月11日(月)-10月16日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


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