藍 画 廊



齋藤正人展
日本中心
SAITOH Masato


齋藤正人展の展示風景です。



展示は2点の作品から構成されています。
作品タイトルは「日本中心」で、サイズは可変、素材は陶を使用しています。



画廊入口から見て、手前に設置された作品です。
土饅頭をイメージした作品です。
土饅頭とは、土を饅頭のように小高く盛り上げて作った墓のことです。



作品のアップです。
今回の作品は、来年初頭に金沢で開催される齋藤さんの展覧会と兼ねています。
その為、作品に金沢縁(ゆかり)の意匠や、九谷焼の特色を踏襲しています。



奥に設置された作品です。
これは家型の墓で、中に「よみがえれ日本」の文字が。
この言葉は先の参議院選挙で躍進した某政党のパロディだそうですが、「よみがえれ日本」という意味は本気です。



後ろから見た、「よみがえれ日本」です。



「日本中心」。
展覧会のサブタイトルですが、日本が中心という排他的な意味ではありませんね。
日本の精神の中心という意味だと思います。
そこで問題にしているのは、日本の様式です。

様式とは、ある範囲の事物・事柄に共通している一定の型、方法、スタイルのことです。
あるいは、習慣・約束などで定められたやり方です。

「日本中心」の展示は、死の様式を扱っています。
それも古くて、忘れ去られようとしている土饅頭などの墓の様式を提示しています。
そこには死が厳然として存在しています。
日本人の死生観が表れています。

文化とは生活の総体のことですが、とりわけ死に対する様式にその独自性が出ます。
その社会集団が死をどのように捉えているか。
いわば、それが中心となって文化は形成されます。
そのような意味で、齋藤さんは「日本中心」というサブタイトルを付けたと思います。

画廊で作品を眺めていると、繁栄の代償として失った、日本人の死生観が浮かび上がってきます。
それは死者と濃い繋がりがあった、古(いにしえ)の日本人の死生観です。
古といっても、つい半世紀前までは、地方では普通にあった観念、様式です。

墓とは何でしょうか。
単に遺体や遺骨を埋葬した場所ではありません。
又、記念(メモリアル)の為に建てられた建造物でもありません。
それは、祖先(死者)と交換する場所です。
交換して、現在の自己を確認する場所です。
そのような死生観が、かつての日本人の死生観であり、それを形にしたのが、日本の様式でした。

画廊には、一つの死の様式が展示されています。
日本の死の様式です。
それは厳粛ですが、どこかユーモラスでもあります。
それは多分、日本の様式の所為でもあるし、齋藤さんの作品の特質でもあると思います。
そこが、この展覧会を一層興味深いものにしています。

ご高覧よろしくお願い致します。

2009年藍画廊個展

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会期


2010年8月30日(月)-9月4日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内