「世界」2004 高野麻紀展
TAKANO Maki
iGallery企画「世界」の2004年展は高野麻紀さんの個展です。
展示風景です。
画廊の入口からの撮影です。
案内状とまったく同じ展示です。
では、画廊の中に入ってみましょう。
入れませんね。
入口にロープが渡してあります。
ロープの前で身を乗り出すようにして内(なか)を覗いてみると、壁面には正面の一点しかありません。
ふと足下に目をやると、大きなガラスが床に設置されています。
ロープがあるので内には入れませんが、想像してみましょう。
わたしは鑑賞者です。
いつものように画廊にやって来ました。
入口から見ると、正面に美しい風景の写真とおぼしき作品が展示されています。
近づいて見ようとすると、足下のガラスが眼に入りました。
薄そうなガラスです。
軽量なわたしがのっても割れるかもしれません。
しかもガラスは大きいので、跨いで向こう側や横に行けそうもありません。
でも、近づいて風景の写真をもっとよく見たい。
もしガラスが割れたら・・・・。
わたしは、諦めて入口で作品を鑑賞するか、それとも意を決してガラスの上を歩くか。わたしは態度を保留して、一旦画廊の外に出てみました。
道路側のウィンドウにも作品が展示されています。
左は高野さんが記した展覧会についての文章です。
中と右は写真です。
画廊内の写真と同じ雰囲気がありますから、同じ場所で撮られた作品ではないでしょうか。
わたしは再び画廊の入口に戻り、思案を重ねます。
もしガラスが割れたら、どうなるのでしょうか。
わたしは作品を壊したことになりますが、ここに作品を置いた作家は承知なのでしょうか。
入るべきか、入らないでここから見るべきか・・・・。
作家の高野さんに少しお話を聞いてみました。
画廊内に展示されている風景のカラー写真は、以前住んでいた部屋の窓からの景色だそうです。
サイズは道路側ウィンドウの写真も共通で、252×338mmです。
ガラスのサイズは1600×2000×3mm。
3mmの厚さですから、人がのれば割れるかもしれません。
今回の床にガラスを置くインスタレーションは、アパートの部屋という日常空間でも展示されたことがあります。
その展示では、室内の各所にガラスが設置されていました。
やはり、人がのれば割れるかもしれない厚さのガラスです。
美しい景色を捕らえた作品です。
空と森の対比が絵画的で、構図もナチュラルです。
この景色を高野さんは毎日眺めていたのですね。
上の画像は入口から手だけ伸ばして撮影した画像です。
この美しい写真と大きなガラスが画廊内のすべてです。
簡潔ですが、冷たさを感じさせない空間です。
これは高野さんの資質だと思います。
一見ガラスで鑑賞者を試しているようですが、空間には仄(ほの)かな親しさがあります。
道具立ての硬質さとは裏腹な柔和さも感じられます。
緊張感の中に、人を招き入れようとする意志があります。
「ご自由にどうぞ」、とその空間が語っているように見えます。
ロープで区切られた画廊空間は、一つの箱にも見えます。
展示された作品を含む、内側が白い箱の展示。
そのように見えます。
道路側ウィンドウの展示も、ガラスで仕切られた箱の展示といえます。
(この空間も簡潔で美しい。)
一つの壁で連結された二つの箱は、外から見ると「現代美術の箱」です。
一本のロープが、作品の展示と、画廊(現代美術)という箱の展示の、二重構造を強調した気がします。
ただし、作家にとって画廊の箱は副次的な意図ではないかと想像します。
まずは、「ご自由にどうぞ」の意味をわたしは考えてみます。
そこから高野さんの世界に入っていきたいと思います。
ご高覧よろしくお願いいたします。
「世界」2004 高野麻紀展 TAKANO Maki Ausstellung in der Galerie2004年12月13日(月)-25日(土) <19日(日)23日(祝)休廊>
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
会場案内
作家略歴
1965年 東京都に生れる
1989年 多摩美術大学絵画科油画専攻卒業
個展
1991 ギャラリー現/東京
1992 西瓜糖/東京
ギャラリー現/東京
藍画廊/東京
1994 ギャラリーQ/東京
「西瓜糖の日々ー14人の美術家」 西瓜糖/東京
1995 ギャラリー現/東京
1996 「EACH SELECTION- Out of Painting」 ギャラリーなつか/東京
1997 西瓜糖/東京
1998 藍画廊/東京
1999 ギャラリー現/東京
2000 300日画廊/東京
2003 「Ausstellung in der Wohnung」 /ベルリン
グループ展
1990 「川口 尚子・高野麻紀」 世田谷区民ギャラリー/東京
1992 「第5回アクリラート展」 目黒区美術館/東京
1995 「第1回 美と術」藍画廊/東京
1999 「TEN」藍画廊/東京
2001 「Compilation2001 vol.2」 ギャラリーイセヨシ/東京
2002 「NEW GENERATION 2」 海岸通りギャラリーCASO/大阪