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『Tinariwen』


東京銀座に、数寄屋橋の交差点があります。
ソニービルのある交差点といえば、ご存知かと思います。
ある日、そこから大音量でキング・サニー・アデの『シンクロシステム』が流れてきました。
1985年前後のことです。

ソニービルの入口には小さなスペースがあって、いつも何かのイベントが行われています。
そのイベントで流していた音楽が、アデの『シンクロシステム』でした。
キング・サニー・アデは、アフリカ/ナイジェリアのミュージシャンです。
彼の音楽はジュジュミュージックと呼ばれ、トーキングドラムとスティールギターに特徴があります。

わたしは特に『シンクロシステム』のスティールギターが好きでした。
突き抜けるような爽快さで、しかも温かみのある音色のギターです。
その後に関西旅行した際、キング・サニー・アデの公演を大阪で見ました。
80年代は音楽に恵まれた時代でしたが、その中でもアデのジュジュミュージックは出色でした。



ギターという楽器は、ほど良い大きさで、演奏している姿が様(さま)になります。
ギターの人気が爆発したのは、やはりベンチャーズからです。
それ以前にも「禁じられた遊び」のアコースティックギター人気はありましたが、若者を虜にしたのは、ベンチャーズのエレキギターです。
ベンチャーズも、高校生の時にイナカから上京してライブに行きました。
台東体育館、もしくは江東体育館でした。
体育館を取巻く入場者の列のほとんどが、アイビーのマドラスチェックのシャツだったのが印象に残っています。
(アイビーブーム、若者が初めてカジュアルファッションを手に入れた時代です。)

ベンチャーズは、最初からオジさんでした。
ギターはカッコ良かったのですが、ファッションも雰囲気もオジさんで、カッコ悪かった。
それまでの芸能界のセンスと変わりませんでした。

エレキギターで、しかもすべてがカッコ良い。
ほぼ同時期に出現した、ビートルズですね。
以降、ギターの人気は不動のものとなりました。



その後の、ジミヘン、クラプトン、(ジェフ・)ベック、ペイジの時代がギターの最盛期といっていいでしょう。
ファッションで何かカッコ良いかといって、ギターを背負った姿ほどカッコ良いものはありませんでした。
楽器が弾けないわたしにとって、不幸な時代でしたが、それらの音楽を浴びるように聴けたのは幸せでした。

80年代は、ギターで流麗にソロをとるのが流行らない時代でした。
カッティング重視で、以前のような華やかさはありませんでした。
ニューウェーブ初期は、逆にサックスやダサいといわれていたアコーディオンなどに光があたりました。

それでも、ギターはロックミュージックには欠かせませんでした。
ギターとベースとドラム。
これがロックの基本ですね。

80年代で印象に残っているのは、上記のアデとジェームス・ブラッド・ウルマー。
ジャズ系のギタリストですが、ジャズとファンクとロックが入り交じった、黒くて濃いギタープレイでした。
渋谷公会堂の来日公演は、一時間ほどの演奏時間で、かなり不満が残ったライブでした。

90年代後半から最近までの、ギター事情は知りません。
上に書いたことも、個人的なギターにまつわる話で、全般ではありません。
もっと音楽に詳しい人なら、客観的で詳細なギター事情を書けると思います。
ともあれ、以前のように音楽を聴いていないので、90年代後半以降は良く分かりません。

それで、Tinariwenです。



Tinariwenは、ティナリウェンと読みます。
北アフリカのベルベル人系遊牧民であるトゥアレグ人のバンドです。
Tinariwenのギターは、久しぶりに聴いた、カッコ良いギターの音です。
リードギターとそれに絡む二本のギター。
ボーカルとコーラスとリズムセクション、と手拍子。

と、ヘタな説明をするより実際に音楽を聴いていただきましょう。
Tinariwen オフィシャルサイト
トップページの大きな画像が新作『アマン・イマン〜水こそ命』のジャケットです。
写っているのがTinariwenの面々ですね。
最前がリードギターでリードボーカルの男性。
(たぶんリーダーでしょうね。)
若き日のカルロス・サンタナを彷彿させる容貌です。

ジャケット画像の下の<CLICK HERE TO LISTEN>をクリックすると、四曲フルバージョンで試聴できます。
まずは、二番目のCler Achelをお聴き下さい。
アルバムではオープニングの曲です。

如何でしたでしょうか。
濃くてダンサブルで、カッコ良い曲でしょ?
ライブ映像も見たい?
はい、分かりました。
今度はジャケット画像の右端のリンクのYOUTUBEをクリックして下さい。
このページに行きます。

なんとまぁ、さきほど形容したカルロス・サンタナとの共演ですが、サンタナが弾きすぎてダメですね。
音も圧縮のしすぎで迫力がない。
ま、参考の映像と思って下さい。

それにしても、このギターの濃いウネリは、何ともカッコ良いです!
身体が自然に揺れてきます。
21世紀初頭のギターは、Tinariwenで決まりですね。