カメラが手許にあるとき、つい向けてみたくなる被写体というものがあります。
写真を撮る方なら、心当たりがあると思います。
それは人によって異なりますが、わたしの場合は箱状のものです。
風景の中に箱のようなものがあると、ついシャッターを押してしまいます。
この箱は、古い倉庫ではないでしょうか。
駐車場の奥に置き去りにされたような箱(倉庫)です。
場所は甲府市の中心部から東に少し行ったところです。
古いコンクリートの質感と、端正なキューブが気になって、撮影しました。
この日はわたしの休日で、何処というあてもなく散歩がてら甲府市に向かったのでした。
撮影したのは午後の二時頃で、平日の長閑な昼下がりでした。
ここからさらに東方向に一時間半ほど歩いていくと、又気になる被写体が現れました。
三角形の土地に建っている建物と照明灯です。
最初は潰れたガソリンスタンドかと思いましたが、スタンドにしては狭いし、給油施設もありません。
良く見れば、コンクリートの地面には駐車枠も描かれています。
廃業した店舗(たぶん飲食店)ですね。
照明灯と建物のバランスが、絶妙だと思いませんか。
どことなくエドワード・ホッパーを思い出させる風景です。
この建物は箱ではありませんが、箱を組み合わせた幾何学的な形状をしています。
西の空に向かっている陽の光が、この風景には似合いますね。
さて、ここから又さらに東方向に歩いて三十分。
五角形の平面を持つ箱状の建物です。
カマボコ型の箱、ですね。
これは工場兼倉庫でしょうか。
こういう物件に、わたしは弱い。
不動産屋の言いなりではなくて、カメラが勝手に向いてしまいます。
さて、(くどいですが)ここからさらに東方向に歩いて三十分。
甲府市の外れまで足を延ばしました。
箱状ですねぇ。
個人的には本日のベストショットと思っている、風景の中の箱です。
これも倉庫みたいですね。
完全に傾いた陽が、風景を同系色で染めています。
規則正しく並んでいる窓も、幾何学的な箱のアクセントになっています。
(ページトップの小さな画像は斜めから撮影したものです。)
わたしは、特に倉庫や工場や廃屋が好きなわけではありません。
好きなわけではありませんが、どういうわけかカメラを向けてしまう。
自分自身で想像すると、わたしは風景の中の幾何が、好きなんでしょうね。
このページを2005年1月23日に急死した故吉田哲也くん(美術作家)に捧げます。
吉田くん、今まで本当に有り難う。