休日の特権は、朝早く起きなくても良いことです。
目が覚めて、布団の中でその日をどう過ごすか考える時間は、贅沢な一時かもしれません。
その日、わたしは遅い朝食と昼食を兼ねて近所のカフェに向かいました。
カフェの入口で何気なく後ろを振り返ると、道路の向こう側が広い駐車場になっている所為で、空が大きく開(ひら)けています。
空は、見渡すかぎり薄いグレーの空間です。
水とホワイトで薄めたグレーの絵具を何層にも塗ったような均一な空間です。
「帰りに写真を撮ろう」と思って、わたしはカフェのドアを開けました。
カフェを出て左にいって、バス通りに出たら右に曲がって真直ぐいくとT字路にぶつかります。
その角のマンションです。
いつも見ているマンションが、薄いグレーを背景にすると新鮮に見えました。
冬の空気と、ほんのりとした暗さが、物質感を際立たせているように見えました。
その角を左に曲がると、女子大に通じる裏道に出ます。
女子大生の多くは駅からこの道を通って大学に行きます。
閑静な住宅街です。
その内の一軒。
右は集合住宅でしょうか。
今考えれば、空と、ベランダの隣の窓ガラスの質感に眼がいってシャッターを押したのかもしれません。
そこから一分ほど歩くと、大きな一軒家があります。
大きな屋根ですね。
青空の時は白く輝いていた外壁が、空より暗いグレーになっています。
窓の配置が、シンメトリーの様でシンメトリーでないのが気に入りました。
カフェから歩いて5分ほどのところに駐車場があります。
その間に八枚の写真を撮りました。
後でコンピュータに取り込むと、あたかもモノクロームの写真を見ているようです。
ほんのりと色はのっているのですが、気がつかなければモノクロームです。
カフェを出て、駐車場のクルマのドアを閉めるまで、わたしは薄いグレーの空の下にいました。
陽の光が、白墨色のカーテンを透して世界を平等(モノクローム)に照らしていたのかもしれません。
曇り空は、気分が落ち着くような、あるいは気が沈むような空です。
たまには、そんな休日も良いものです。
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