その日は火曜日。
いつも月曜は藍画廊で撮影などをして、東京に泊まります。
翌日はまっすぐ山梨に帰って、藍画廊の展覧会案内の更新をするのですが、今週は二週間開催の二週目。
急ぐ必要もないので、今日はゆっくり美術館めぐり。
まずは有楽町線で池袋経由で中村橋まで行って、練馬美術館。
親しい浜田涼さんの展示です。
見終わると丁度お昼の時間なので、隣の区民センターのようなところで食事にしました。
公共施設のわりには安くない値段でしたが、展覧会が面白かったので、ここは良しとしましょう。
その足で、今度は初台のオペラシティギャラリーへ。
滅多にしない都内電車移動なので、乗り換えに戸惑いましたが、何とか京王新線の初台駅に着きました。
(最初は京王線に乗ってしまい、笹塚から戻りました。その昔、初台に3年間も住んだというのに。)
オペラシティギャラリーはホンマタカシ展。
こちらもボリュームと変化があって、楽しめました。
新宿に戻って、いつものように「特急かいじ」で帰ろうと京王線に乗りましたが、途中で気が変わりました。
偶には各駅停車に乗るのも良いかも。
そんな考えが、頭をよぎったのです。
それで、新宿から又京王線の準急に乗って高尾駅まで行くことにしました。
高尾まで行けば、そう待たずに各駅停車の甲府行きがあるはずです。
高尾に着くと、案の定、20分待ちで甲府行きが。
駅ビルの本屋で時間を潰して、電車に乗り込むと、一番前の車両しかボックス席(四人席)が空いていません。
仕方ないので、先頭車両の進行方向左側に陣取って、発車を待ちました。
電車の窓を見ると、しばらく掃除をしていないような汚れ具合。
その曇り具合がフィルターのようだったので、停車する駅ごとにiPhoneで写真を撮ることにしました。
撮る場所は座っている座席で、そこから窓越しに見える景色に限定しました。
どんな景色になるか分かりませんが、それも一興です。
そんな企みの一枚目が始発駅の高尾で、右は最初の駅の相模湖です。
さて次は、藤野と上野原。
藤野は神奈川県で、上野原は山梨県です。
この途中に、とても美しい黄色い鉄橋が見えます。
一度写真に撮りたいと思っているのですが、場所が定かではありません。
上の二つの写真、上手い具合に花が見えるところで車両が止まりました。
何となくぼやけて見えるのは、窓ガラスの汚れと、陽の光の具合です。
(若干エフェクトも施してありますが。)
四方津と染川の駅です。
この辺りは東京への通勤圏ですね。
「千と千尋の神隠し」の舞台になったのは、この周辺の新興住宅地です。
しかし各駅停車にまともに乗るのは、本当に久し振りです。
いつも「特急かいじ」で、しかも大概寝不足なので、音楽を聴きながら寝ていることが多くなりました。
最初の頃は景色を見ていたのですが、いつの間にかそうなってしまいました。
中央本線は風景が良いので何回見ても飽きないのですが、慢性的な寝不足体質になってしまい、つい寝てしまいます。
まぁ、電車でウトウトと寝るのも気持ちが良いものですが。
鳥沢と猿橋です。
猿橋は江戸時代、日本三大奇矯として有名でした。
それ以上に思い出深いのは、大学時代の恩師、中野収先生が猿橋にお住まいだったことです。
残念にも5年ほど前に逝去され、通夜と葬儀はこの近くのセレモニーホールで行われました。
通夜に出席しましたが、先生のお人柄もあって、多くの方が参列しました。
大学時代といえば、帰郷は当然各駅停車で、当時は鈍行といっていました。
新宿から甲府までの長距離便があって、初台に住み、甲府駅前が実家でしたから、直行便みたいなものでした。
わたしは甲府の街が好きでしたから、長い休みには概ね帰っていました。
大学生という特権にドップリ漬かって、無為な青春を送っていました。
鳥沢、猿橋とくれば、次は大月なのですが、車両が止まった場所が悪い。
跨線橋の階段の前で、どうにも写真になりません。
何回か撮り直したのですが、ダメ。
というわけで、大月を抜かして、初狩と笹子です。
どちらもわたしの好きな建造物が窓から見えました。
笹子は笹子餅というお菓子が昔から名物で、売り子が必ず電車に乗っていました。
今は特急の車内販売のみで、各駅停車には来ません。
なぜなら、各駅停車は生活電車になっていて、昔のように旅の電車ではなくなったからです。
車内もそんな感じで、学生や用事で乗っている人が大半です。
左は各駅停車の座席です。
トンネルの中で撮影しました。
その昔の蒸気機関車の頃、中央線はトンネルが多くて、新宿駅に着くと鼻の穴が煤で真っ黒でした。
でも、子供はトンネルが好きで、わたしもトンネルに入ると何かウキウキしたものです。
右は勝沼ぶどう郷駅です。
駅が桜の名所ですが、もう葉桜ですね。
ということは、大月以外にも一駅飛ばしたことになります。
甲斐大和という駅があるのですが、もしかしたら2本の黄色い鉄柱の写真がそれかもしれません。
だとしたら、初狩か笹子が抜けているかも。
一応コンセプチュアルな試み(笑)なので、充分注意はしていたのですが。
塩山と東山梨市です。
塩山は比較的大きな町で、町村合併で甲州市になりましたが、その中心になっています。
駅の近くに塩山温泉郷という、ほとんど知られていない温泉街があります。
意外に効能がありそうな気がします。
それと、駅近くに塩山シネマという映画館もあって、これが住宅街のど真ん中に真っ青なペイントの建物で驚きます。
東山梨市は無人駅で、この辺りから葡萄畑に変わって桃の畑が目につき始めます。
桃の花は濃いピンクですが、白い花の桃の木もあります。
進行方向右側が、なぜか白い花が多かったような記憶があります。
山梨市と春日居町です。
山梨市の駅前には大きなカーボン工場があって、工場萌えのわたしのお気に入りです。
写真はその工場の壁面ですが、エフェクトを施してあるので、少しアンバーになっています。
山梨市出身の有名人としては、林真理子と中沢新一がいます。
中沢新一の叔父は、歴史学者の網野善彦で、『僕の叔父さん』にその辺りの事情が詳しく書かれています。
その網野善彦は隣市の笛吹市の出身です。
(といっても、出生後直ぐに東京に越したそうです。)
春日居町は、市町村合併で前述の笛吹市となりましたが、桃の産地として有名です。
線路沿いに桃畑が並んでいて、上の写真でもその一部が見えます。
山梨で桃といえば一宮ですが、味では春日居も負けてはいません。
その甘い桃は、全国的に有名です。
といってる間に、降車駅「石和温泉駅」に着きました。
ここは駅の片側が薔薇の花園になっています。
季節になると、薔薇の香りが駅全体に漂います。
花の色もグラデーションになるように、配置されています。
駅前には、(どうでも良いような)モニュメントと足湯があります。
足湯は、電車の時間待ちに最適ですのでご利用を。
(iGallery DCに電車で来た時なんか、役立ちますね。)
こんなノンビリとした電車の乗り方も、悪くはありません。
きっと、震災の余波の疲れがあったから、いつもと違って各駅停車を選んだのでしょう。
そして震災に遭った人にも、これを見て、少しでもノンビリしていただければと、(心のどこかで)思ったのかもしれません。
そこのところは、自分でも分かりません。
ともあれ、ロクな写真は撮れませんでしたが、撮影位置を無理矢理固定した、窮屈な試みとしてお楽しみ下さい。
これもiPhoneのような手軽なガジェットだからこそできる、遊びです。
もう少し前の時期だったら、桜と桃が満開でしたが、それも時の運。
名残も、捨てたものではありません。
それでは、家に帰ります。