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探偵物語(40)


ぼ ぼ 僕らは少年探偵団 勇気凛々 瑠璃の色・・・・・・

ご存知(といっても中年以上の方だけだが)、少年探偵団の歌です。
今回は少年探偵団が喜びそうな話をしてみましょう。


地方の探偵にとって、クルマは必需品です。
公共交通機関が衰退してしまったので、どこに行くのにもクルマです。
そのクルマが16万Kmのオドメーターを残して、昨年暮壊れてしまいました。
直せば又走りますが、寿命ということで買い替えました。

その日は、午前中K市の中心部で調査を行い、午後はクルマの定期点検に充てました。
ディーラーは市内の南部にあって、周りは住宅や小工場と畑が少々。
点検時間は小一時間で済みますが、クルマを預けて周辺の探索に出掛けました。
二時間ほどで戻る予定ですが、点検を急がせないので、かえって修理担当者には喜ばれます。

知らない町を彷徨するのは楽しいもので、若干浮き足立った心持ちでディーラーの店舗を後にしました。
メインの通りが南北に延びていますが、南に進むと直ぐにバイパス、北に進むと道が行き止まりになっています。
その先は、右に曲がれば隣りの町に続く道があるようです。
とりあえず、北に進んでみることにしました。

歩き始めて数分もしないうちに、通りの右側の建物が目に入りました。
いきなり、収穫です。



色といい形といい、わたしの好きな建物です。
突き出た所は、見張り搭でしょうか。
モダンな屋根の姿が目を引きます。

見張り搭が必要な建物、ここは何をしている所なのでしょうか。
どことなく、怪しさが漂っている建物です。
辺りに人の姿も見えません。



建物の道路側に付けられたバルコニー、ないしは非常出口です。
金属製の手すりが、光を受けてとても美しくて、しばし見とれてしまいました。
二枚の画像を見てお分かりのように、空は濃いグレーの雲に覆われています。
しかし雨の降る様子はなく、雲間から日が差すと、初夏の陽気に変化しました。


歩道と建物の敷地の間には金属のフェンスがあって、途切れることなく続いています。
上の建物以外にも二階建、平屋の建物がありますが、フェンスの所為でよく見えません。
百メートルも歩くと交差する道路に出て、そこが敷地の角になっています。
角の所だけはストライプのフェンスになっていて、建物の様子が分かります。



フェンス越しに見た角の建物です。
(一番上の小さな画像も角の建物です。)
雲の切れ間から日が射し、雲は薔薇色に染まっています。

角を曲がり、なおもフェンスに沿って歩を進めると、研究所のような建物も見えます。
ただし、フェンスがあるので確かな様子が分かりません。
相変わらず人も見えないし、敷地内から音も聞えません。
建物や敷地を表すサイン、プレートは、はどこにもありません。

怪しい。
これは絶対に怪しい。
もしかしたら、世界征服を目論む悪の要塞かもしれない。
この中で、人類を滅ぼす兵器や細菌の研究、製造が行われているのかもしれない。
このような重大事項はわたしの手に負えないので、ここは少年探偵団の出番です。

団長の小林少年に携帯から電話すると、メッセージが流れ、箱根に行っているとのこと。
仕方がないので、明智小五郎に電話したら、こちらも箱根で静養とのこと。
そ〜か、今頃二人は箱根の温泉で懇(ねんご)ろなんですね。
水入らずで、愛を育んでいるに違いありません。

ご存じない方に説明しますと、探偵明智小五郎とその補佐をする小林少年は同性愛の間柄です。
この事実は作者の江戸川乱歩も認めています。
小林少年は、潜入捜査で怪人二十面相と明智小五郎の間を行ったり来たりしますが、それは三角関係だそうです。
しかも、小林少年は女装での潜入が得意とか。
つまり、スリルとサスペンスに満ちた物語の背景には、中年男二人と美少年のラブロマンスが隠されているのです。
そう思って読めば、ストーリーは二倍三倍にも深みが出てくるはずです。

致し方ない、少年探偵団が来れないのなら、しっかり調査だけはしておこう。
妄想を携(たずさ)えながら、わたしは敷地と平行している道を進みました。
休耕田の切れた所が十字路になっていて、左側は小さな公園になっています。
公園の中に入り、敷地の方を眺めると・・・・。



何やら面妖な建物が。
しかししかし、これはどこかで見たことがあるぞ。
そうだ、ハウルの動く城だ!

探偵物語(41)に続く