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探偵物語(29)


今年も、あと僅かで終りです。
事務所は昨日で仕事納めになり、今日は居室の大掃除をしていました。
大掃除といっても、実に適当で、目に付いたところをチョコチョコとやっただけです。
(歳を取っても、性格は変わらないものですね。)

景気が上向いた一年といわれていますが、実感はありませんでした。
本業というか、探偵の主たる調査の依頼は減る一方です。
副業のペット探索が増えて、なんとか遣り繰りしている次第です。
もっともこれは、わたしの特異な半日営業の所為もあります。
この営業形態は来年も続くと思いますので、そのうちペット専門になる恐れがあります。

夕食を済ませ、夜はコンピューターの大掃除に取り掛かりました。
不要なファイルやアプリケーションを棄てて、HDの空容量を増やすつもりが、途中で作業が止まってしまいました。
撮り溜めた画像をつい見ていたら、撮影時の情況を次から次へと思い出してしまったのです。
引越の荷物整理で、昔購入した書籍や写真に見入ってしまうアレと同じです。



この画像は、晩秋に撮ったものです。
撮影場所は隣りにある実家の裏手です。
何の実か分かりませんが、明るい紫の小さな実です。

確かこの時は休みの日で、読書か何かの合間に、実家の庭をカメラ片手に探索していました。
職業柄というか、樹木の影や家の裏側に、どうも足や眼が行ってしまいます。
もちろん、日当たりの良い庭の花なども撮りますが、そちらは正統的な写真のセオリーに従っているだけです。
撮らないと、何だか申し訳ないような気がしまして。



これも裏手の通路に咲いていた花で、(多分)椿だと思います。
わたしは花の名前をほとんど知らない人で、見分けがつくのは、チューリップとかカーネーションとか薔薇ぐらいです。
ホントお粗末な人間です。
この一輪が裏手で最も目立っていた花で、枯れかけていたのですが、風情がありました。

探偵は、人間の裏側や社会の裏側を見る職業です。
表との落差に驚いたり、ウンザリしたりしますが、時には感動する場面があります。
この仕事に就いて良かった、と思える時があります。

それは、表面には出さない人の優しさだったり、思いやりです。
あるいは、深い哀しみを抱えて生きる人間の強さです。
それが裏側で垣間見えたとき、胸が熱くなります。



裏手の最も暗い場所ですが、中央のオレンジの小さな葉にフォーカスしたカットです。
逆さになって捨てられた、白いプラスティックの鉢も気に入りました。

今回は前述した通り、陰(影)の部分の多い画像です。
探偵業を長くやっていると、どうしても人間の表と裏の違いを知ってしまいます。
人前に出す部分と出さない部分の違いです。

どちらがその人なのかといえば、それは一概にはいえません。
常識的な見解ですが、表と裏のどちらもその人だと思います。

視点を変えてみると、表と裏の境目にその人があるかもしれません。
表と裏の境界を設定するのは、当の本人で、それこそがその人の生き方です。
陽に当たる自分と陰に隠す自分を決めるのは、本人だけができることですから。

さて、来年は2007年。
何が起きるか分かりませんが、とりあえず失業だけは避けたいと思っています。
引き続き、ヘボな探偵の物語にお付き合い下さい。
よろしくお願い致します。