わたしが撮影しているカメラは、仕事用のカメラです。
そう、探偵業で使っているカメラです。
コンパクトなデジタルカメラで、仕事柄、写りよりも携帯性を重視したものです。
スパイ映画で有名なミノックスという超小型カメラもありますが、あれは小さすぎてダメです。
それに今の時代、フィルムでは利便性に欠けます。
先月の初旬に金持ちのネコの探索がありました。
仕事が首尾よく終ると、予想外の謝礼が出ました。
思ってもみなかったお金だったので、好きなことに費やそうと決めました。
資金繰りに使っても、どうせ又すぐ自転車操業です。
それよりは、気分転換する方が得策だと考えまして。
そこで、仕事後(プライベートな探偵)の撮影用カメラを買うことにしました。
ええ、気合いを入れて街や郊外の光景を切り取ろうと思いまして。
気合いを入れても、写りが良くなるかどうかは疑問ですが、カタチから入るのがわたしの流儀です。
まずは、自分自身をその気にさせることが大切です。
画面も大きくなりました。
大きくはなりましたが、写っている光景は代わり映えしません。
何の変哲もない、古びた小さい工場です。
どうして、こんな光景を好き好んで切り取るのでしょうか。
自分でよく分からないので、試しに問うてみただけですが、当然これは自分で解明する類いの問題です。
そう、自分で考えなければいけません。
自分が切り取った光景をよく見て、自分で考えてみます。
工場は、多くの場合、直線や曲線で構成されています。
上の画像を見ると、一目瞭然ですね。
曖昧な線というものが、無い。
偶々停めてる自転車だって、直線と曲線で構成されています。
つまり、わたしは直線と曲線で構成された風景が好きなのです。
一つ、解明されました。
鉄骨、ですね。
建築用の鉄骨、建築資材です。
資材置場となっている庭の光景です。
これが美しいかといえば、人夫々(それぞれ)だと思います。
大概の人は、何とも思わないでしょうね。
わたしは美しいと思い、撮影しました。
微妙に違う資材の形態と、錆び止めの塗装色に目が行ったのです。
無彩色な背景も、気に入りました。
そうそう、直線と曲線で構成された風景のバックは、自然であることも重要です。
自然とは、空とか雲とか木々とかです。
そういうものがあった方が、好ましい。
多分、その方が直線と曲線の人工物が際立つからでしょう。
ここまで来て、わたしは直線や曲線の持っている合理が好きなことに気が付きました。
薄々とは感づいていたのですが、この大きな画面で見て、確信しました。
そう、わたしは曖昧さの無い、直線や曲線の合理で構成されたモノが好きなのです。
性格は曖昧そのものですが、だからこそ惹かれるのかもしれません。
探索は次回に続きます。