朝から、雨です。
今日は月曜日。
自営業者の探偵にとって、日曜も月曜もありません。
毎日が月曜かもしれませんし、日曜かもしれません。
それでも月曜は週のスタートであり、世の会社員同様、気が重い日には違いありません。
わたしの住居の部屋には窓が三方あって、西方向はホテルの建物が見えます。
激しい雨です。
時折遠く方で、雷も鳴っています。
予定では、事務所に出勤して、それから調査に出ることになっています。
でも、暗い空を見ていると、部屋から出る気がしません。
このまま一日、部屋に閉じこもっていたい気分です。
頭の中であれこれ算段すると、出勤しなくても何とかなりそうです。
今日一日を、資料の整理や各方面への連絡に充てて、調査を明日に延ばしても間に合うかもしれません。
幸い、冷蔵庫には多少の食糧もあります。
今日は外に出ないで、雨を見ながら過ごすことにしました。
窓ガラスの水滴(雨滴)です。
大きな水滴に近づいて見たら、風景が逆さまに映っています。
一つ一つの水滴に、一つ一つの世界が映っているようです。
子供の頃、雨の日の下校後は、部屋で一人遊をしていました。
自作の簡単なゲームで遊んだり、想像の世界に心を運んでいました。
本を読んでも、いつもよりどっぷりとその世界に浸かっていた気がします。
雨の日はそれなりの過ごし方を心得ていて、それほど嫌いではありませんでした。
子供時代の性癖が、探偵業に結びついたかどうかは分かりませんが、素地を育てたような気はします。
探偵業の基本は、(前にも書きましたが)調査です。
足を使ってひたすら調査することが、結局はゴールへの近道です。
それでも、想像力や正解へのルートを模索する能力は必要です。
それが有効に働けば、無駄な調査を省くことができます。
午前中、資料の整理をしながら、時々窓の水滴を眺めていました。
予報に反して空が徐々に明るくなり、昼食を摂り始めたころ、雨が上がりました。
窓の水滴も多くが蒸発して、陽射しが風景に色彩を与え始めました。
といっても、わたしは出勤する気にはなれません。
景色の変化に見とれて、相変わらず窓を眺めています。
探偵物語(10)に続く