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「美」と「術」2003(2)
(1)に続き、(2)では「美」と「術」2003の展示作品をピックアップしてご案内いたします。
上野慶一さんの作品です。
ドローイングの大作「ルヴハイ」。
紙にアクリルガッシュとオイルスティックで描かれた作品です。
中央の黒い物体、蓋付きのカップのように見えます。
そのカップのようなものから線(ライン)が三本出ています。
もしこの線がなければ、恐らくカップはその場に安定して動かないでしょう。
三本の線が運動と、未知なるものとの繋がり、連動を与えています。
あるいは、この画面はディメンション(次元)の一局面なのかもしれません。
多層に重なった世界の、スライスされた一つの現実なのかもしれません。
線がそれを暗示しているような気がします。
額装された「Cups&Cups」の三部作です。
画廊の展示を真似て、作品の天の位置をズラしてみました。
(この三点の画像はわたしの撮影ではなく、作者である上野さんの撮影画像をリサイズして掲載しました。)
こちらは題名にある通り、カップです。
これらのカップもお互いに関係(干渉)していますね。
鮮やかなドローイングに比べると、ちょっと緩やかというか、緊張感の中にも和らいだ空気が流れている感じです。
物体に対する多面的アプローチが、多面的世界、多義的世界を開示しています。
世界と世界の交わりに、乾杯しているのかもしれません。
次は高馬浩さんの作品です。
パネルに油彩の「夕」です。
実作を見ながら色校正していないので、どの程度再現できているのか自信ありませんが、色彩の美しさはお分りになるかと思います。
画面からうっすらと浮かび上がる赤が何ともいえない作品です。
遠目で見れば一つの色面に見えますが、近寄ると画面に複雑な色とかたちの運動があることが分ります。
静止した色とかたちではなく、運動です。
動いている色とかたちの一瞬を捉えてものではなく、運動している色とかたちです。
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左は「COBALT BLUE」、右は「VERMILION」です。
色の名前ですね。
濃青色と朱色です。
この二点も色とかたちが運動しています。
もっと正確にいえば、世界が運動している様です。
その世界とは、永遠に休むことを知らないエネルギーの流れです。
その世界とは、すべてものが連動しながら存在の確かさに満ちています。
そんな世界の運動だと思います。
次は、チャーミングな小さな立体二点です。
左が「ただ雨」、右は「水からあがる」。
アユースを使用しています。
アユースは、バードカーヴィングやフィッシュカーヴィングの彫刻材として有名で、大変削り易い木です。
表情も柔らかい木です。
この二点、題名からは「水」を思い浮かべます。
そう思って見ると、「水」の運動する様のようにも観えてきます。
捉えることの出来ない「水」の運動を、そのままそこに存在させた作品に観えてきます。
平面や立体に時間はありません。
しかし、時間が過去から未来への一方向ではなく、循環するものだとしたら、立体や平面にも時間はあります。
永遠の時間があります。
多様で多彩な永遠の時間(世界)があります。
上野慶一さんと高馬浩さん。
そこに交叉する点(展)がある、と思います。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2003年12月15日(月)-27日(土)
21日(日)23日(祝)休廊
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)