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藍 画 廊


中村シキカツ展


中村シキカツ展は、「無限の進歩という幻想」と題されたインスタレーションと、芳名帳上の壁面に展示された二点のリソグラフで構成されています。


「無限の進歩という幻想」の一部です。
「無限の進歩という幻想」は、画廊空間全体を使って構成されたインスタレーションです。
左の画像でお分りのように、各種素材(ミクストメディア)で制作されています。


このインスタレーション作品の全体像をテキストと画像で説明するのは困難です。
各部のパーツが有機的に結びついて一つの世界観を表現しているからです。
立体と平面が反響しあい、作品の外側と内側が捩れた形で結合しています。
視覚と聴覚の予想もつかない呼応も作品に隠されているからです。

簡単に作品の概要だけを説明してみます。
画廊に入ると、ブロックで積まれた建造物がまず眼に入ります。
ブロックには、二本の焦げた枕木が突き抜けるように刺さっています。
ブロックの前には木製のデスクと椅子。
デスクの後ろには鉄製のストーブがあり、その二つは細いワイヤーで結ばれています。
デスクを囲む二つの壁面には、巨大なタロットの絵がゼロックスで拡大コピーされています。
ブロックの向こう側の空間は、大きなペンチのようなものと平面。
ブロックの後ろの狭い空間には髪の毛が敷きつめられ、壁面には同じくタロットの絵のコピーです。


鉄製のストーブです。
右側の扉は開いていて、小さなモニターが覗けます。
(一番上の小さな画像をご覧下さい。)
昔の秤(はかり)のアニメーションのようです。

赤い「CAUTION」のタグが付けられたワイヤーはデスクの上部とジョイントされています。
これはどういう仕掛けなんでしょうか。



I'm picking up good vibration
She's givin me excitations

♪♪

The Beach Boysの「GOOD VIBRATIONS」の歌詞の一部です。
当時としては革新的なエロクトロニクスと複雑なコーラスを融合させたビューティフルなナンバーです。
ここで使用されているのが世界最古の電子楽器「テルミン」です。

「テルミン」は、演奏者が楽器に手を触れずに演奏するという際立った特徴があります。
奏者の手が空気を撫でているだけで音が聞こえてくる不思議な楽器です。
この「テルミン」がストーブに仕込まれています。
ワイヤーで結ばれた、デスク上の何もない空間に手を触れると、「テルミン」独特の掴み所のないサウンドが発生します。

では、「テルミン」を使った「無限の進歩という幻想」がgood vibrationかというと、どうも違うようです。
それについては後ほど。


壁面のタロットの絵のカラーコピーです。
同様の作品がリソグラフで制作され、額装されて芳名帳上に展示されています。

Towerが二つと、空を舞う貨幣のイコン、二羽の鳥。

この二枚のタロットは交差法(3Dの観賞方法)で見ると絵が立体になります。


如何ですか?
各所に秘密が隠されていて、全体像を説明できないのがご理解いただけると思います。
以下は展示風景の小さなスナップ三枚です。



中村さんには失礼な言い方になるかもしれませんが、オモチャをぶちまけたような空間構成です。
テーマがシビアな割に、空間自体はノビノビとしています。
良い意味でのイノセント(無邪気さ)が作品にあると思います。

「無限の進歩という幻想」。
この幻想は、bad vibrationです。
科学技術を背景とした、「無限の進歩という幻想」がもたらしたもの。
そこから生れた経済発展。

複雑に絡みあった世界の中でわたし達は生活しています。
その絡み合った糸を解くのは容易ではありません。
絡み合ったままに、それを逆転(反転)して提示する。
それも一つの方法です。
メタファーと遊びにあふれたインスタレーションを観て、わたしはそんなことを感じました。

ご高覧よろしくお願いいたします。

作家Webサイトhttp://www.d3.dion.ne.jp/~shiki/
サウンド・パフォーマンス
11/11(月)18:30〜 with 木村昌哉(sax)
11/14(木)18:30〜 with 藤村匠(Perc)


会期


2002年11月11日(月)-11月16日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内



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