藍 画 廊



立原真理子展
戸とそと
TACHIHARA Mariko


立原真理子展の展示風景です。



各壁面方向ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面方向です。
左から、タイトル「庭と戸」(網戸、刺繍糸)でサイズ860(H)×580(W)×10(D)mm 、「境川と戸」(網戸、刺繍糸)で580×860×10、「境川」(紙、透明水彩)で290×410です。



正面の壁面方向です。
「山々と戸」(網戸、刺繍糸)で850×1800×10です。



右側の壁面方向です。
左から、「小山町の川」(紙、透明水彩)で410×320、「草むら」(網戸、刺繍糸)で580×860×10、「川のむこう」(網戸、刺繍糸)で830×890×10、「山々」(紙、透明水彩)で480×790です。



入口横の壁面方向です。
左から、「島か山々」(紙、透明水彩)で195×335、「めぐる川 2」(網戸、刺繍糸、布、染料)でサイズ可変です。

以上の10点が展示室の展示で、その他小展示室に2点の展示があります。



左壁面の「庭と戸」です。
立原さんの作品の大きな特徴は、アルミサッシの網戸に刺繍で絵が施されていることです。
この作品は壁面に直接展示されていますが、その他の網戸の作品はすべて天井からテグスで吊るされています。
つまり、作品には表裏があって、どちらからでも見ることができるようになっています。
「庭と戸」、これは立原さん宅から眺めた庭の景色でしょうか。



左壁面方向の「境川と戸」です。
境川は東京郊外にある立原さん宅の近くを流れる川です。
川の流れを網の種類を変えることで表現しています。



左壁面の「境川」です。
ドローイングは網戸作品のいわば下絵として制作されますが、元々の作品はこのサイズではありません。
任意にトリミングしてドローイングとして完成させています。



正面壁面方向の「山々と戸」です。
画面ではよくわかりませんが、アルミサッシのフレームや網戸は意図的に古びたものを使用しています。
灼けや汚れも作品の一部になっています。
下は刺繍部分のクローズアップです。



次は右壁面方向の作品です。



右壁面のドローイング、「小山町の川」です。



右壁面方向の「草むら」です。
サッシのフレームの新旧、網戸の網の色調と新旧、複雑な要素が絡んで個々の作品は展示されています。



右壁面方向の「川のむこう」です。
テグスで吊るされた作品は裏側からも見ることができます。
いろいろな角度から作品と触れ合うことができるインスタレーションです。



右壁面の「山々」です。
網戸の余白とドローイングの余白は響き合っているように見えます。



入口横壁面方向の「めぐる川 2」です。
網戸の刺繍が中途から外にはみ出て、布が川の流れを立体的に表現しています。
ギミックに陥りやすい形式ですが、そうなっていないのは流石です。


〈作家コメント〉

家の近くを小さな川が流れる
その川を境に町名が変わる

川にまつわる風景が、いつまでも家の中についてくる
小さな庭をこえて、網戸をこえて、
そとの風景は私の中に映りこむ


表現されているのは、風景です。
立原さん宅の近くを流れる川を中心とした風景です。
それを網戸と刺繍(とドローイング)で表す。
こんな奇想、誰が思いつくのでしょうか。

ところが、ところが、この風景は心を打ちます。
日本人が抱いていた自然に対する心情が見事に継承されています。
古びた建材を要所に用いて風景に奥行きを与え、工芸の要素を巧みに引用して作品に深みを加えています。

アルミサッシの網戸。
何ともチープな素材です。
大量生産される消費材です。
そこに刺繍を施し、テグスで空中に吊るされると、それは独特の表情を持ちます。
緻密さと透明感と、少しの濁り。
そして大いなる余白。

当初は奇想に見えたインスタレーション。
見慣れてくると、実に真っ当な風景のインスタレーションです。
風景とは何か。
その答えの一つがここにはあります。
人と風景の関係が美しく、そして見事に表現されています。

ご高覧よろしくお願い致します。



会期

2013年6月3日(月)ー6月8日(土)

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内