藍 画 廊




阿部尊美展

記憶・・・今・・此処
ABE Takami

阿部尊美展の展示風景です。



各壁面ごとの展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左の3点、サイズは340(H)×480(W)mm、中央200×285、右660×941です。
展示作品の個々の作品にはタイトルが付けられていません。
壁面の作品はすべて写真で、ラムダプリント、アルポリックパネルです。



正面の壁面です。
左は660×941、右は340×480です。



右側の壁面です。
左は480×340、中央480×340、右の9点は200×285です。



入口横の壁面です。
左は480×340、右の2点は340×480です。



床面のインスタレーションです。
サイズは可変です。

以上の22点が展示室の展示で、その他小展示室に1点の展示があります。



左壁面の写真です。
写真は二カ所で撮影されていて、いずれも旅をモチーフに撮影されたものです。
左壁面と入口横壁面は、横浜根岸の森林公園で撮影されました。



左壁面、スーツケースと麦わら帽子。



森林公園の野原でくつろぐ女性。
チェックのビニールシートを敷いて、これから読書するのでしょうか。
多重露光で撮影された写真です。



正面壁面、今度は海ですね。
正面壁面と右壁面の撮影地は湘南の七里ケ浜です。
モデルの女性は同一人物。
これも多重露光です。


右壁面、海を散策する女性。
衣装が白から黒に変わっています。



右壁面、海辺で戯れる女性をスナップした9点の写真。



入口横壁面は再び森林公園です。
多重露光によるショットです。



床面のインスタレーションの部分です。
置かれているのは旅の写真に写された女性の衣類、持ち物等です。



詩集が1冊。
谷川俊太郎さんの旅について書かれた詩のページが開かれています。
青いバケツには海岸の砂も。


〈作家コメント〉

「今」とは、どこからどこまでを指すのだろう。
「今」ここにいる時は、明確な現実感よりも、むしろ状態を捕えきれない曖昧な意識の方が強い。
記憶として相対化される以前のその意識を、写真を媒体にして探っている。


今。
時間とは変化ですが、その変化の一点を示すのが今です。
しかし、今を明確に意識することは困難です。
今は、今と思った瞬間過去になり、捉えることが出来ません。

阿部さんは旅をモチーフに写真を撮りました。
美しい公園と海。
記憶に残る光景です。
この写真だけ見ていたのなら、幾分ロマンチックな旅の記録として楽しめます。

ところが、床にはぶちまけられたように衣類やスーツケースなどが散乱しています。
見る者は、当然この対比、ギャップが意識に上ります。

壁面の記憶と床面の生々しさ。
この距離は、時間です。
床にあるのは、今ではありませんが、今を凍結したようなモノです。
その生々しいモノは、今を固定化する装置として働いているように思えます。

画廊にモノを置く。
これは美術の制度によって、美術品になります。
これは私見ですが、阿部さんはこの制度を逆に利用したのではないでしょうか。
レディメイド(既製品)のモノは、その本来置かれた場所から画廊に移されると、変化します。
ある種の生々しさが生まれるのです。
それは記憶から、今、此処にあって、今を象徴するモノに変わります。

美しい記憶と生々しい今。
その狭間の中でわたしたちは毎日という日々を送っているのでしょうか。
阿部さんの作品を拝見しながら、ふとそんな思いがよぎりました。

ご高覧よろしくお願い致します。


 

会期

2012年9月24日(月)ー9月29日(土)

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内