新世代への視点2012
本橋大介展
MOTOHASHI Daisuke
東京現代美術画廊会議(銀座、京橋地区の10の画廊を中心に発足し、現在は12の画廊)は、1993年より「-画廊からの発言- 新世代への視点」を主催してまいりました。
13回目の開催となる2012年展の藍画廊の展示は、本橋大介さんの平面作品です。
各壁面ごとの展示をご覧下さい。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
左からタイトル「小竹町 2 丁目の道」でサイズ100(H)×180.3(W)cm、「赤い町屋 8 丁目」で90×180.4です。
正面の壁面です。
左から「外からの丸」で36.2×18.4、「スペース丸」で100.4×180.2です。
右側の壁面です。
左から「水天宮 孕む列」で90.7×180、「8」で90.2×180.2です。
入口横の壁面です。
左から「食卓のロケット」で20.1×36.4、「尻焼温泉」で26.5×30.1、「溜まる」で90×179.9です。
以上の9点で本橋大介展は構成されています。
使用画材は和紙、ベニヤ、アクリルガッシュ、墨、糊、ボンドなどです。
左壁面の「小竹町 2 丁目の道」です。
タイトル通り、小竹町の道路と建物を描写した作品ですが、画面は上下でシンメトリーになっています。
下半分は木版の版木で、上半分はそれを摺ったものです。
左壁面の「赤い町屋 8 丁目」です。
町家8丁目の風景をシルエットにして円周状にした作品ですが、これも左右でシンメトリーになっています。
左が版木で、右は紙(雁皮紙)に摺ったもの。
今回の本橋さんの作品はすべてこのスタイル(版木と木版画の並列)で制作されています。
正面壁面の「スペース丸」です。
これは版画が上で版木が下です。
「スペース丸」の丸は一円玉大の円が無数に彫られている作品で、作家の技量が窺われる作品です。
上は「スペース丸」の部分です。
この細い円を彫るのは並ではないですね。
右壁面の「水天宮 孕む列」です。
左が版画で、右が版木。
水天宮は安産の神ですから、これは妊婦の列ですね。
何となくユーモラス。
右壁面の「8」です。
この画面では分かりませんが、中央に幼児が描かれて(彫られて)います。
これも右が版木で左が木版画ですが、版木に塗られた絵具を見るとモノタイプであることが分かります。
つまり版画の部分も、ここでは一応版画といっているだけで、同じものが複数摺れるわけではありません。
他の作品も摺った後に版木に手を加えているので(サンドペーパーなどで加工する)、すべてモノタイプ(一点もの)の作品です。
入口横壁面の「食卓のロケット」と「尻焼温泉」です。
「食卓のロケット」は飛行機の機内食で使用するナイフ、フォーク、スプーンを組み合わせた作品。
入口横壁面の「溜まる」で、これはクリップが描かれています。
空間の取り方がナイスですね。
〈作家コメント〉
描いて彫って摺る。
この行為のために様々なモチーフを模索してきました。
あるときは一定のテンポのくりかえしを表現し、あるときは自分が存在した場所の記録です。
木版画の技法は体質にあっているのでもっと探ってゆきたい。本橋さんの今回の手法は、前回藍画廊個展で1点だけ展示されました。
それを全面展開したのが今回の個展です。
木版画の版木とそれを摺ったものを並列してシンメトリーに展示する手法です。これは見方を変えると繰り返しになります。
反復ですね。
この反復が画廊全体に渡っていると、そこにリズムが生じます。
このリズムが、まず面白い。
一点一点の微妙な相違ある反復も見物ですが、全体に渡る反復はそれと同等です。
この本橋さんの作品を何と呼んでいいのか分かりません。
版画では、ないですね。
かといって、レリーフでもない。
とりあえず木版画を基本とした平面と呼ばせていただきますが、ユニークな作風です。
それと同様に注目してもらいたいのが、木版の技術。
空間の多い作品が多いので気が付きづらいのですが、相当な技術がないとこれらの作品は制作できません。
どこかすっとぼけていて、ユーモラス。
かと思えば、執拗に彫られた円の宇宙感の広がり。
何ともいえない面白さを秘めた作品群です。
版木に絵を描いて彫る。
それに絵具をのせて摺る。
その二つを並べてみると、ポジとネガのような関係になります。
それが連続して一つの絵になる。
いや、絵になっている。
その不可思議さと、技量の確かさが、本橋さんの作品の魅力です。
ご高覧よろしくお願い致します。
2009年藍画廊個展
2010年藍画廊個展
「新世代への視点2012」公式Webサイト
会期
2012年7月23日(月)-8月4日(土)
日曜休廊
11:30am-7:00pm(金曜日-20:00 最終日-6:00pm)
会場案内