藍 画 廊



川へのドア展 2011
DOOR TO THE RIVER 24


川へのドア展2011の展示風景です。



画廊入口から見て、正面壁面方向です。



今度は逆に、正面壁面から見た画廊入口方向です。

川へのドア展ー「DOOR TO THE RIVER 24」ーは、横浜国立大学教育学部美術科の卒業生のグループ展です。
本展は昨年に続いて藍画廊開催で、24回目。
四半世紀に渡るグループ展です。
実に息の長い、それでいて当初の志を持続させている展覧会です。
「川へのドア」はウィレム・デ・クーニングの作品名に由来しています。
それでは作家別の展示を左壁面から時計回りにご覧いただきます。

まずは和田彰(WADA Akira)さんですが、展示場所が三カ所に別れています。



左は左壁面の左端で、右は左壁面です。
タイトルはすべて「Landscape」で、サイズは左の2点共21.5(H)×21.5(W)cm、右の正方形の6点は20×20、額装の作品は31.5×44です。
紙・キャンバス・アクリル絵具を使用しています。



上は小展示室に展示された「道標」で、サイズは19.5×14.5で、紙・アクリル絵具を使用しています。
小展示室にポツンと1点置かれた作品ですが、意外に目立つ絵画です。



松川正浩(MATSUKAWA Masahiro)さんの展示です。
同じ風景ですが、技法を変えて描いてあります。
タイトルはすべて「Green Planet」で、左上から順に3.5.6.2.1.4と番号がふってあります。
サイズはすべて22.2×29.4。
使用画材は左上からパネル・キャンバスボード・アクリル絵具/パネル・紙・色鉛筆/パネル・紙・カラーペン/パネル・紙・透明水彩/パネル・紙・鉛筆/パネル・キャンバスボード・油彩です。



上は「Green Planet5」でパネル・紙・色鉛筆を使用しています。
同じ風景でも、技法、使用画材で、風景の見え方や内実が大きく異ってくるのが分かります。



仲野泰生(NAKANO Yasuo)さんの展示です。
左からタイトル「本の形象 1」、「本の形象 2」、「本の形象3」、「本の形象 4」でサイズはすべて11×16、棚の作品の平面は共に「本の形象」でサイズも共に16×12で、ブック形式の作品は「記憶の本」で6×10×8.5です。
作品はすべて紙・コラージュ・絵具で制作されています。



ブック形式の作品「記憶の本」です。
市販の小さなノートを本に仕立て上げた作品です。
中を開けると、パンフレットなどから切り抜いた小さな写真と短文が書かれています。
これは美術館に勤務する仲野さんの日常をスクラップしたものです。



河上明彦(KAWAKAMI Akihiko)さんの展示です。
左から「視差と匂い I」で30×30、「視差と匂いII」で30×30、「ことのゆくへ」で22.5×27です。
作品はすべて木製パネル・メディウム・土・木炭を使用しています。



「ことのゆくへ」です。
絵画の構造を追求した抽象絵画です。
絵具は自家製で、そのこだわりも絵画への探求に繋がっています。



菱刈俊作(HISHIKARI Shunsaku)さんの展示です。
立体と平面(写真)が混じった展示ですが、タイトルはすべて「類推の山」です。
立体は左から11×17×10、4×7×4.5、18×24.5×15.5、13×13×15、19×15×19で、木材・アクリル絵具を使用しています。
平面は15×10.5が6点で、写真がフレームに入っています。



写真作品「類推の山」の中の1点です。
湖畔のような所で、人が柵に手をかけているよう見えますが、このボンヤリした写真では定かではありません。
写真と言われなければドローイングにもみえる不思議な画像で、どんな技法を使っているのでしょうか。
立体との並立も非常に興味深い「類推の山」です。



河上喜彦(KAWAKAMI Yoshihiko)さんの展示です。
「Card Works 18weeks」で15×10が126枚で、紙・インク・漂白剤を使用しています。
昨年に続くCard Worksシリーズで1日1枚制作され、今回は126日分(18週間)が展示されています。



「Card Works 18weeks」の3日分です。
6色前後の万年筆用インクで線を引き、それを水でぼかしたり、漂白剤で色を抜いたりする、独創的な方法で制作されています。
このシリーズは長きに渡っていて、その作品数は膨大なものだそうです。



地場賢太郎(CHIBA Kentarou)さんの展示です。
タイトルはすべて「The Thousand Echoes」で、平面作品とビデオ作品で構成されています。
平面は左から時計回りに、24.2×33.3(F4) 、41×31.8(F6)、22.5×17.5、24.2×33.3(F4)で、キャンバスに油彩、パネルに油彩です。
ビデオ作品は、モニターに万華鏡のように三角形に鏡が取り付けられていています。
5分程度の作品で、ミニマルな音楽(イヤホンで聴く)とシンクロしてとても面白い効果を出しています。
アナログな外観に似合わない、先鋭な映像を楽しめる作品です。



上は平面の「The Thousand Echoes」の1点です。



阿部英也(ABE Hideya)さんの展示です。
「私は紙を覆い、紙は壁を覆う1〜3」で、サイズは3点共97×63で、紙・水彩絵具・アクリル絵具・コラージュで制作されています。
近づいて見ると、いろいろなモノがコラージュされていて、見飽きません。



床に置かれたコラージュのリトルブックと立体。
子供のオモチャのような、想像力を刺激するオブジェの作品。


いや〜盛り沢山で、ご紹介するのにも少し疲れました。
大変なボリュームです。
バラエティの富んだ表現方法ですが、そこに一貫性が感じられるのは、24回目という歴史の所為でしょうか。
あるいはグループの由来である、ウィレム・デ・クーニングの精神からブレていない証拠でしょうか。

グループ展の良さは、適度な(競争心による)刺激、緊張感と志の共有ではないかと思います。
「川へのドア」展には、それが無理なく流れています。
妙な自己顕示もなければ、謙遜や卑下もない。
各自が自然体で自己の表現をしている。
これはとても羨ましいことです。

藍画廊は個展中心の画廊で、作家の個性が全開になります。
このような多人数のグループ展は稀ですが、時には良いものです。
一人一人の個性が連なって、画廊全体を満たす、ある空気。
その空気は個展にはないもので、優れたグループ展特有のものです。
それがどんなものであるかは、画廊に足を運んでお確かめ下さい。

ご高覧よろしくお願い致します。

2010年藍画廊グループ展

 

会期

2011年12月12日(月)ー12月17日(土)

11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内