高橋俊文展
TAKAHASHI Toshifumi
高橋俊文展の展示風景です。
画廊入口から見て、左側の壁面です。
タイトル「Object No.4」で、サイズ194.0(H)×162.0(W)cmです。
正面の壁面です。
「Object No.5」で162.0×194.0です。
右側の壁面です。
「Object No.6」で130.3×162.0です。
入口横の壁面です。
「Object No.2」で130.3×162.0です。
以上の4点が展示室の展示で、その他小展示室に1点の展示があります。
作品はすべてキャンバスにアクリル絵具です。
左壁面の「Object No.4」です。
抽象表現主義のカラーフィールドの画風の作品にも、どこかの国の国旗のようにも見える作品です。
しかし画面から受けるのは、どこかザラザラした印象です。
部分のクローズアップです。
遠目にはフラットでハードエッジに見れる画面も、近づいてみると、ご覧のようにラフな塗りと色面の境界です。
正面壁面の「Object No.5」です。
これもクローズアップをご覧下さい。
色面の赤の上部ですが、厚塗りで、キャンバスのエッジはデコボコしています。
塗り方も丁寧に重ね塗りしてあるというより、塗るという行為の積み重ねのように見えます。
この量感は、物質としての絵の具を強調しているようには見えません。
それよりも、ただ単に絵の具が塗り重なっている感じです。
右壁面の「Object No.6」です。
これも他の作品と同じように厚塗りですが、この作品だけは下地に異なる色を使っています。
ラフな塗り方と相まって、部分的に見える下地の色は、どこか居心地の悪さを覚えます。
入口横壁面の「Object No.2」です。
カラフルな画面ですが、他の作品同様、近づいてみるとラフな描き方がされています。
色と形が最小限度の抽象絵画のように見える、高橋さんの作品。
しかし、何かヘンです。
過去の作品をファイルで拝見すると、毛布に直接ペインティングしたシリーズがあります。
その質感は、今回の作品と似ていて、奇妙な鑑賞感を後に残します。
絵の具をラフに何回も厚塗りした画面。
それは前述したように、絵の具の物質性が強調された画面でもなければ、カラーフィールドの絵画でもありません。
この描き方には、どこか不穏な空気が漂っています。
高橋さんに作品について訊いてみました。
すると、ノイズという言葉が高橋さんの口から出てきました。
その言葉を聞くと、今までの疑問が少しずつ氷解していきました。
絵画をある音楽に喩えたり、画面から音楽が聴こえてくるような作品があります。
高橋さんの作品も、ノイズミュージックに喩えれば、随分と見え方がハッキリします。
抽象絵画の形式を借りていますが、無造作な色面は混沌としたノイズ(雑音)に満ちています。
そしてその方法論が、高橋さんにとっては一番素直で、自身にとって納得できる表現です。
ノイズとは人間をイライラさせるものですが、皮肉なことに、ノイズを完全に取り除くと、もっと病的な世界になります。
ノイズという成分は、どういうわけか、適度に人間にとって必要なもののようです。
エレキギターの音が気持ち良いのは、それがもともとノイズを含む楽器だからです。
わたしたちは知らず知らずのうちに、ノイズを楽しんでいるのです。
最小限の色と形。
その色と形で、ノイズを奏でる。
高橋さんの絵画を一言で表せば、そうなるかもしれません。
その奏で方は穏当のようでいて、大胆です。
先入観を棄てて、色面の中に入り込めば、多彩な音楽が聴こえてくるはずです。
ご高覧よろしくお願い致します。
会期
2010年11月22日(月)-11月27日(土)
11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)
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