藍 画 廊



花田伸展
ー水底のエトランゼー
HANADA Shin


花田伸展の展示風景です。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から作品タイトル「UTAKATA 10-C1」で、サイズは410(H)×410(W)mm、「UTAKATA 10-C2」で530×530、「UTAKATA 10-C3」で530×530、「UTAKATA 10-C4」で652×652、「UTAKATA 10-C5」で652×652です。



正面の壁面です。
左から「UTAKATA 10-A1」で1455×1455、「UTAKATA 10-A2」で1455×1455です。



右側の壁面です。
左から「UTAKATA 10-B1」で1167×1167、「UTAKATA 10-B2」で1167×1167、「UTAKATA 10-B3」で1167×1167です。



入口横の壁面です。
左から「Water drawing 1」で530×455、「Water drawing 2」で530×455、「Water drawing 3」で530×455です。

以上の13点が展示室の展示で、その他小展示室に6点の展示があります。
UTAKATAシリーズと小展示室の作品は綿布にアクリル、Water drawingシリーズは綿布にアクリルと墨を使用しています。



毎日猛暑が続いていますが、藍画廊にはブルーを基調とした、涼しげな作品が並んでいます。
上は左壁面の 「UTAKATA 10-C2」です。
花田さんの主要な画材はエアブラシと水です。
一般的な絵筆は使いません。
この作品の場合は、まずエアブラシで色を付け、その後に水を垂らして画面を作っていきます。
(エアブラシとはスプレーのようなもので、噴霧式の塗装器具です。)



同じく左壁面の 「UTAKATA 10-C5」です。
こちらはまず水で綿布を湿らしておいて、その上からエアブラシで絵の具を吹き付けます。
手法的にはその二つを使って、ほとんどの作品を制作しています。



正面壁面の「UTAKATA 10-A1」です。
UTAKATAは以前から花田さんが制作しているシリーズですが、泡沫、つまり水面に浮かぶ泡のことです。
泡沫にはもう一つの意味もあって、はかなく消えやすいものの喩えとして使われます。
作品からは、両者の意味が伝わってくるような気がします。




「UTAKATA 10-A2」です。
最小限度の描画ですが、それが美しい空間を浮かび上がらせています。



右壁面の2点、「UTAKATA 10-B2」と「UTAKATA 10-B3」です。
絵の具と水の混じり具合、弾け具合が、とても面白い効果を生んでいます。
滲みが、美しいですね。



入口横壁面の 「Water drawing 1」です。
この作品は墨を使っています。
手法は同じでも、色合いで受ける印象が相当に異なります。


水底のエトランゼ。
本展のサブタイトルです。
水の底を彷徨う異邦人(エトランゼ)の意かどうか分かりませんが、作品の印象を上手く表したタイトルです。

花田さんの作品の特徴は、何と言っても手を使って描いていないことです。
もちろん、エアブラシも水(スポイトのようなもので垂らす)も手を使いますが、絵筆は使っていません。
その着色感、滲み、浮遊感は独特で、手の力を感じません。
かといって、画面が弱いわけではなく、絵は確実に存在しています。
押しつけがましくなく、静かですが、確固としてそこに描画があります。

なぜ手を使わないか。
その理由の一つには、偶然性の導入があります。
絵の具は水と組み合わせることによって、思いもよらぬ効果が表れる場合があります。
水は、その状態によって滲んで、絵の具を散らしたり収縮させたりします。
作画の意図と水がもたらす偶然が絡み合って、絵の方向性は、作者を思わぬ方向に連れて行く場合があります。

花田さんの絵は、水の絵です。
それは絵の具と水を用いて描いているのも理由ですが、その画面の淡い浮遊感と色合いは、水の絵を感じさせます。
恐らく、絵筆をつかっていたら、このような独自の画面は生まれなかったでしょう。
花田さんと、絵の具と、水が戯れて作られた、水の絵画です。

ご高覧よろしくお願い致します。

2001年藍画廊個展



会期

2010年8月16日(月)ー21日(土)


11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内