藍 画 廊



青木聖吾展
目の裏の皮膚「白い色」
AOKI Seigo


青木聖吾展の展示風景です。



各壁面の展示をご覧下さい。



画廊入口から見て、左側の壁面です。
左から、作品タイトル「家族」で、サイズは117(H)×91(W)cm、「風景」で65×53です。



正面の壁面です。
「目の裏の皮膚」で130×161です。



右側の壁面です。
「稜線」で146×112です。



入口横の壁面です。
「目の裏の皮膚、HAL」で80×65です。

以上の5点が展示室の展示で、その他小展示室に5点、事務室壁面に2点の展示があります。
展示室と事務室壁面の作品は油彩にキャンバス、小展示室は色鉛筆にマーメイドを使用しています。



左壁面の「家族」です。
青木さんの知人のご家族の写真を基に描いた作品ですが、家族の写真はあくまでも作画のきっかけです。
最初のモチーフからは離れて、独立した絵画として制作されています。



同じく左壁面の「風景」です。
これは特にモチーフはなく、自由に描いていった作品です。
どことなく、アメリカ合衆国の地図に見えますね。



正面壁面の「目の裏の皮膚」です。
親子が手を繋いでいるような画面ですが、クローズアップをご覧下さい。



これは大人の人物像の脇の部分ですが、何と、丸と三角と四角で絵が構成されています。
そして色は光の三原色である赤、緑、青、それと黒だけを使用しています。
展示室と事務室壁面の作品の大部分は以上の要素で描かれており、部分的に線が用いられているだけです。



右壁面の「稜線」です。
この作品も写真を基にしていますが、あくまでも作画の端緒にすぎません。
絵画の地と図の関係に興味がそそられます。



左は入口横壁面の「目の裏の皮膚、HAL」、右は小展示室のマーメイドに色鉛筆で描かれた作品(無題)です。
色鉛筆のドローイングは、展示室の作品とは異なった要素で描かれていますが、共通点もあります。
その繋がりと、小展示室の独立性が、展覧会の幅を広げています。


画廊でこの展示に相対したときの、不可思議な感覚。
それは形と色の要素を、最小限まで還元したことが大きな因になっています。
赤と緑と青(と黒)、丸と三角と四角。
後は作品によっては部分的に線を用いているだけ。
しかしこれらの作品は、印刷の網点のような働きとは異なります。
画面の要素を分解してそうなっているのではなくて、最小限の要素の集積が絵画を形成しています。

展示は大きく分けると二つに分かれます。
抽象的な「家族」、「風景」、「稜線」。
人物が描かれた「目の裏の皮膚」シリーズ。
前者は絵画的実験に跳んでいて、地と図がせめぎ合っています。
後者は人間というものの成り立ちを強く意識させます。

両者に共通するのは色や形を成立させている「白い色」です。
丁寧に塗られた白い色は、通常は地として図の背景になりますが、ここでは同等のポジションに在ります。
そのポジションの特異性が、冒頭に書いた不可思議な感覚を作っていると思われます。

画廊でたまたま知り合いの作家Kさんとお会いしました。
Kさんのお仕事は福祉関係で、自閉症等の障害を持った方と日頃接しています。
そのような方の中には高度の機能を有する方がいて、蛍光灯の点滅が認識出来る人もいるそうです。
Kさんは「目の裏の皮膚」の人物を見て、そのことを思い出したそうです。

これは青木さんの絵画の核心を突いています。
つまり絵画とは、通常の人間の網膜を働きを超えることが可能なものなのです。
そういう世界を描くことが可能なのです。
そしてそこで見えてくるものは、人間の在り方、世界の在り方なのです。
平たくいえば、人間とは何か、世界とは何かということです。
単なる絵画のための絵画ではなく、絵画が為しうる、絵画でしか為しえない表現がそこにあります。
それは結構大変なことですが、ここでは、それがきちんと作品(絵画)として実践されています。

ご高覧よろしくお願い致します。



会期

2010年6月7日(月)-6月12日(土)

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内