藍 画 廊



高橋ユミ展
TAKAHASHI Yumi


高橋ユミ展の展示風景です。



画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。
左の三点の組作品、作品タイトル「海 —声—」で、作品サイズ(左から)25(H)×50.5(W)cm、22.7×79.5cm、27×79.5cm、
右の三点の組作品「つめ草 —地(球)面より—」で、(左から)42.6×32.3cm、42.6×67cm、42.6×32.3cmです。



入口横右の壁面です。
二点の組作品「サルビア —消えない火—」で、二点とも41×79.8cmです。



左の壁面です。
三点の組作品「あおい —雨やみ—」で、(左から)85.2×42.6cm、85.2×56cm、85.2×42.6cmです。

以上の四組作品で高橋ユミ展は構成されています。
作品はすべてデジタルプリントとシルクスクリーンで制作されています。



左壁面の「あおい —雨やみ—」です。
あおい(葵)が画面一杯に描写されています。
雨上がりのあおいでしょうか。
中央と左右では、色調が違います。

作品は写真(フィルム)をスキャンして、コンピューターに取り込み、インクジェットで出力されます。
出力された紙に、シルクスクリーン(版画の版種)をかけて完成させます。
その過程はなかなか複雑で、レタッチソフトで画像をレイヤーに分解したり、そのレイヤーの一つをシルクに焼付ける作業も含まれています。
つまり、高橋さんには予(あらかじ)めあるイメージがあって、撮影、レタッチ、シルクスクリーンのプロセスで、イメージを確立する(イメージを明解にする)作業が行われています。



正面壁面の「海 —声—」の右端の作品です。
他の作品同様、組になっている作品の一点です。
海の景色で、一見モノクロームに見えますが、元はカラーで撮影したものです。



右壁面の「つめ草 —地(球)面より—」です。
この作品はモノクロームで撮影されたものです。
作品は例外的に、左右の作品には写真が使用されていません。
シルクスクリーンのみの制作です。
中央は、白い花を咲かせているつめ草の群生。



中央のクローズアップです。
高橋さんの作品の色彩はかなり微妙で、正確にお伝えできる自信がありません。
参考としてご覧いただきたいのですが、それにしても不思議な色合いです。
この色調を得るには、相当な試行錯誤と技術が必要でしょう。



唯一鮮やかな色彩が前面に出た、入口横右壁面の「サルビア —消えない火—」の一部です。
燃えるようなサルビアの緋色ですが、これも不思議な色彩の世界。

この作品で一巡ですが、言うにいえない感触を残す高橋さんの作品。
静かなようでいて、心を揺るがすような、ありふれた風景の描写。
高橋さんは、何を見ているのでしょうか。


やはり、非常に微妙な色調と階調を持った画面です。
非常とは常ならぬことですが、まさに普通ではない色調と階調。
レタッチソフトにはプリセット(用意されたセット)で色調や階調を変化させる機能がありますが、これは高橋さん独自のプリセット。
何とも言えないような感触を与える、プリセットです。

何とも言えないでは話が進みませんから、何とか説明してみましょうね。
切り取られた風景はありふれていますが、切り取り方には細心の注意が払われています。
高橋さんが、これだと思った風景の一部です。
それを版画の方法に倣って、分解します。
版のようにレイヤー(層)を扱って、画像を分解し、再度重ね合わせます。

このプロセスにプリセットの秘密があって、レタッチと版画の混合技法がその正体です。
では、なぜこのような方法を採るかといえば、風景の相を分解合成して、風景の本質を見ようとしているからです。
私見ですが、多分正解だと思います。

風景の相とは、風景の持つ多面な要素です。
例えば、植物の群生。
そこには生がありますが、死が内包されています。
過去にあった死と、未来にある死が内包されています。
あるいは、陽射しの変化や、季節の移り変わりが、植物によって表れています。
多面な時間と空間が、植物の群生の相です。

高橋さんのプリセット。
心が、揺るぎます。
軽い胸騒ぎが、ズシンと心の底に落ちてきます。
風景は、近くて、遠い!

ご高覧よろしくお願い致します。



会期


2008年6月9日(月)ー14日(土)


11:30amー7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内