村田俊展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。
左から、作品タイトル「水場 P.14(渦の中)」で、作品サイズ1455(H)×1120(W)mm (F80)、
「空の形」で、1303×970mm (F60)、
「峠 P.11(砦、光、空、影)」で、910×727mm (F30)です。
入口横右の壁面です。
左から、「地中の音」で、530×455mm (F10)、
「オリエントの記憶」で、410×318 mm(F6)、
「災熱」で、727×606 mm(F20)です。
左側の壁面です。
左から、「峠 P.10(古の砦)」で、1620×1303mm (F100)、
「緑の盛り」で、410×318mm (F6)です。
以上の八点が画廊内の展示で、その他道路側ウィンドウに一点の展示があります。
作品はすべてキャンバスに油彩で、一部作品に木炭、パステルも使用しています。
左壁面の「峠 P.10(古の砦)」です。
荒々しいタッチの油彩で、一見抽象的な画面です。
しかしここに描かれているのは風景です。
タイトルも風景を表しています。
本展のサブタイトルは「風景-非日常的連結-」で、作品の基になっているのは風景です。
それを「非日常的連結」させたのが、村田さんの絵画です。
同じく左壁面の「緑の盛り」です。 この作品はストレートに風景を連想させますね。 まさしく緑の盛りで、五月六月あたりの季節でしょうか。 画面に点在する赤が印象的です。 |
次は正面壁面の「水場 P.14(渦の中)」です。
タイトルから想像するに、この作品の基は川の渦のようです。
渦の動きと、川と川の周囲の風景が自在に切り取られて、再構成されているように見えます。
右壁面の「峠 P.11(砦、光、空、影)」です。 風景を構成している、モノと光と影と空。 それが村田さんの内部で分解され、画面上で連結されています。 |
最後は入口横右壁面の左側二点です。
他の展示作品とはガラリと変わって、抑制された表現の二点です。
しかし方法は同じで、やはり風景が基になっています。
もし風景に陰と陽のような二面があったとしたなら、陰の部分にあたるのかもしれません。
最初にご覧いただいた「峠 P.10(古の砦)」は、村田さんのご自宅の近くの風景です。
散策していた時に遺跡の発掘があって、その風景が印象に残り、作品のモチーフにしたそうです。
特に遺跡(古い砦、城)の形、色と付近の樹木、空の青さが眼に焼き付きました。
わたしたちはいつも風景を見ています。
しかし風景の全部を見ているわけではなく、風景の部分をセレクトして見ています。
そのような意味では、村田さんも風景の部分をセレクトしています。
違うのは、風景に実用を求めておらず、風景そのものに関心があることです。
村田さんは、セレクトした風景を画面でぶつけ合います。
元の位置から解放された風景は、激しく(あるいは静かに)交錯して、村田さんの風景に変貌します。
風景の私有化です。
風景には空間と時間があります。
遺跡を見れば、人はそこに古き時の流れを見出します。
見上げれば、古き時にもあった同じ空が青い輝きを見せています。
一方で、見ている村田さんの内部にも、蓄積された空間と時間があります。
生きるとは、時間の流れの中で、空間が変容するのを見続けることですから。
画面で出会うのは、現実の風景と村田さん内部の風景です。
そこに衝突や融合があって、絵画が造られていきます。
描かれているのは「風景の非日常的連結」ですが、言葉を変えると、「風景の原形」です。
「風景とは何か」という問いに対する、村田さんの試みではないかと思いました。