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藍 画 廊

 


奥村綱雄「夜警の刺繍」




会場風景です。



壁面に小さな平面が二点ですね。
その平面の左側に1枚の紙が貼ってあります。
お分かりでしょうか?

壁面:刺繍/ブックカバー(文庫サイズ)
床:刺繍用具と制服
壁面:制作風景


この展覧会が三つのパーツから構成されていることを告げています。
順に御紹介したいと思います。




刺繍です。
サイズは、文庫本のブックカバーサイズです。
作品に近づいてよ〜く見ると赤、青、黄の三色の点の集まりになっています。
刺繍の制作過程は後程ご覧いただきます。







これが、制作風景です。
なるほど、夜警の仕事の合間に刺繍をしているのですね。
パーキングビルの警備のようです。
刺繍をしている夜警、何か変ですね。
夜警という言葉の厳めしさと、刺繍が結びつきません。




刺繍用具と夜警の制服です。
円い輪に布を張って刺繍をしています。
アップで見てみましょう。



赤、青、黄の糸が縫われているのが分かります。
しかし、文庫のカバーサイズにビッシリと刺繍するには大変な時間がかかります。
上の写真、目覚まし時計の上にカウンターがあります。
どうやら、刺繍に要した時間をカウントしたものらしいですね。
どのくらいかかかったのでしょうか?


1633時間ですか!!
1日24時間ぶっ通しで刺繍したとして68日もかかります。
一点に34日かかる計算です。
仮に1日4時間刺繍したとしたら、一点に204日かかります。
何かバカげていますね。
しかし、このバカバカしさの裏側には何があるのでしょうか。


最初にお見せした平面二点は、それだけで自立した作品ではないと思います。
制作風景や制服、刺繍用具とセットになって始めて作品となるものです。
平面は作品を構成する一部です。

ここでの作品は、多分眼に見えないものです。
平面の作品は、時間という眼に見えないを顕在化させたものです。
いってみれば、時間の痕跡です。
そういった類いの作品は特に珍しいものではありません。
ここで重要なのは、夜警という仕事とそれが不可分に結びついていることです。
仕事は日常ですから、ここにある平面の意味するものはダイレクトな日常ということになります。
作品を作るというある種特殊な時間と、日常の時間の境目がここにはありません。
そこからこの作品の面白さが拡がっている、とわたしは思います。

御高覧よろしくお願いいたします。


会期

2001年8月6日(月)-8月18日(土)

日曜休廊

11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)



会場案内


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