おかの素子展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。
左から、タイトル「世界」で、サイズは53(H)×223(W)cm、
「家族」で、 70×135cmです。
手前に置かれた二点の立体は、左から「和」で、14.3×29cm、
「感謝」で、9.5×8.2cmです。
入口横右の壁面です。
上は「家族」で、43×111.5cm、
下は「人」で、43×174cmです。
画廊入口の上の壁面です。 「愛」で、70×135cmです。 |
左側の壁面です。
左の小品三点、「愛」で各7.5×7.5cmです。
中央は「家族」で、135×70cm、
右は「文化」で、135×70cmです。
以上十二点が画廊内の展示作品で、その他道路側ウィンドウに一点の展示があります。
作品はすべて和紙に墨で、小品三点と画廊中央に置かれた二点は樹脂を使用しています。
「家族」と題された作品は四点展示されていますが、その内の一点、左側壁面の作品です。
上から押しつぶされたような「家族」ですね。
家族に降りかかった苦難を表しているのかもしれません。
この作品は焼桐額で額装されています。
左壁面の右に展示された「文化」です。
文化が、連なっています。
墨が薄くなった状態で制作されました。
正面壁面の「世界」です。
「界」の字は分かりますが、「世」の字は?
首を左に真横に傾けて下さい。
90度回転している「世」の字が見えますね。
入口横右壁面の「人」です。
最も絵画に近い作品です。
放置して腐らせた墨を使っています。
書をアクリル樹脂で密閉した作品二点です。 書は「和」と「感謝」です。 |
現代美術が中心の藍画廊では珍しい書の展示です。
おかのさんはその辺りを承知で、本展に臨みました。
わたし自身は書に疎いのですが、比較的オーソドックスな書もあれば、前衛的な書もある感じです。
漢字はビジュアルな文字で、図形が基になっています。
そういった意味では絵画に近いのですが、抽象性の高さではまったく異なります。
おかのさんの作品は、文字(書)の抽象性を自身の具体性(個人的事柄)に引きつけて、基の図形に還元しているように見えます。
その具体性とは、展覧会のサブタイトルである「家族」に象徴されます。
わたしは、おかのさんと同じく「家族」にとても興味を持っています。
それはわたしの個人的事柄でもあり、「家族」の社会的存在に対する関心でもあります。
「家族」とは何か。
とても難しくて厄介な問題ですが、いずれは誰もが直面する問題です。
おかのさんは、逃げることなくストレートに「家族」と向かい合っています。
その姿勢は、作品から窺われます。
自分を含む家族の意味や、自分と他の家族の関係が、書で問われ、書で答えを導こうとしています。
(絵画でも、描くことはつまり思考することですから、同じです。)
答えは出るでしょうか?
出るかもしれないし、一生出ないかもしれない。
しかし、書を制作する以外に答えに近づく道はない。
そういう決意が、おかのさんの作品にはあります。
作品とは、そもそもそのようなものであり、そこに美術と書の違いは見出せません。
ご高覧よろしくお願いいたします。