藍 画 廊



山内勝展
血の循環/CIRCULATION THE BLOOD
YAMAUCHI Masaru


山内勝展の展示風景です。



画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。
五点づつ、計十点の展示です。



右側壁面と入口横右の壁面です。
入口横右には四点の展示があります。



左側の壁面です。
八点の展示です。

以上が画廊内の展示で、その他芳名帳スペースに一点の展示があります。
作品はすべてF10号のサイズで、キャンバスに油絵具を使用しています。



右側壁面の作品です。
本展のサブタイトルは「血の循環」です。

作品の大きな特徴は、全てにレントゲン写真が使用されていることです。
上の作品の中央の五つの方形。
いずれもレントゲン写真です。



この作品も右側壁面に展示されていますが、二枚のレントゲン写真が使用されています。
中央の上下です。
レントゲン写真を囲むように描かれた太いラインは、テープを曲げて貼り、マスキングしたものです。
この技法も展示作品の多くで使われています。



左側壁面の作品です。
画面の各所にレントゲン写真が貼られています。
白い三本のラインはテープの技法で、左下の三つの渦巻きはマーカーで描かれています。

山内さんの作品は一見すると抽象の平面に見えますが、ご紹介の通り、特殊な構造、技法で制作されています。
レントゲン写真はネガフィルムで、像の黒白が反転しています。
しかもフィルム(透明)なので、地の色が透けて見えます。
その特徴を活かして、画面が構成されています。

レントゲン写真に写された血管の道筋。
どなたもご覧になったことがあると思います。
カメラは不思議なもので、人間の眼に比べるとはるかに劣りますが、人間の眼では見えないものを表示することができます。
レントゲン写真がその代表ですね。

写真と絵画の関係も微妙です。
写実を専らとしていた絵画は、写真の登場で、その役割の変化を余儀なくされました。
そして、絵画の本質という問題に直面しました。
逆説的にいえば、写真の登場によって、絵画はより絵画であることを指向することになりました。

山内さんが「血の循環」を描くきっかけは、ご自身の狭心症の発病です。
それと、以前から気になっていたレントゲン写真の形象が、制作で結びつきました。
血管は、人間の体内をくまなく循環しています。
その微細さと正確さは、一つの宇宙に匹敵します。

一つの血管が詰まったり、破れると、命取りになる場合もあります。
しかし、人間にとって「血の循環」は不可視です。
レントゲン写真によって、初めてそのシステムを見ることができます。

皮膚が傷ついて血管が破れると、出血します。
見えない血管が、その内実を人間の眼に露にする瞬間です。
血は鮮烈で、レントゲン写真の無感動な表情とは対照的です。

山内さんの作品には、絵画の鮮やかな想像力と、よそよそしくて直裁なレントゲン写真が同居しています。
それを繋ぐかのような、気紛れなテープの跡と自由なマーカーの線描。
異なる要素が一つの画面で、循環しているのかもしれません。



ご高覧よろしくお願いいたします。


会期

2006年4月3日(月)-4月8日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内