瀧澤潔新作展の展示風景です。
壁面と床のすべてが赤い紙片で埋め尽くされています。
ご覧いただいているのは、画廊入口から見て正面と右側の壁面方向です。
こちらは、右側と入口横右の壁面方向です。
やはり同じように赤い紙片で覆われています。
左側の壁面方向です。
赤い部屋とでも形容したくなるインスタレーションのタイトルは、「The Wall」。
壁、です。
壁面のクローズアップです。
矩形の赤い紙が、隙間なく貼られています。
使用しているのは厚手の紙とマーキュロクロム(Mercurochrome)です。
マーキュロクロムとは、あの赤チンのことで、傷口に塗る消毒薬です。
昔は、転んで膝小僧に赤チンを縫った子供をよく見ました。
瀧澤さんにお話しを伺うと、壁はパレスチナにある壁が制作の動機になっているそうです。
パレスチナとイスラエルを隔てる、政治的な壁です。
画廊内の展示は、このインスタレーション一点です。
薄暗い展示室に入ると、意外に居心地が悪くありません。
いや、心地良いといった方が正しいでしょう。
赤という刺激的な色彩一色ですが、温かみがあり、微妙な赤のグラデーションに眼を奪われます。
クレーやカンディンスキーの、透明感のある抽象絵画に包まれているような心地です。
壁面や床を照らしているのは、天井から下げられた白熱灯ですが、光が外からも来ているような錯覚をおぼえます。
実際には、白熱灯の光を穏やかに吸収、反射している紙とマーキュロクロムの質が、その効果を生んでいます。
穏やかで、温かな、空間です。
他を分け隔てる、排他的な壁。
その意味を逆転させ、相互に影響を与えながら融合する壁となっています。
その他の展示作品として、道路側ウィンドウに四点、芳名帳スペースに二点のドローイングが展示されています。
道路側ウィンドウの展示です。 サイズはすべて、33(H)×36(W)cmです。 色鉛筆の芯と綿布を使用しています。 |
ドローイング作品は、水に浸した綿布の上で色鉛筆の芯をローリングさせ、そのまま自然接着させたものです。
色の滲みが、二つの異なる素材のコラボレーションのようです。
これも、相互に影響を与えながら融合しています。
中心となっている色鉛筆の芯が光を連想させます。
(共通作品タイトルは「Drawing for Light」です。)
ご高覧よろしくお願いいたします。
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