藍 画 廊



黒田良行展
phenomenon
KURODA Yoshiyuki


黒田良行展の展示風景です。
画廊入口から見て、左側の壁面方向です。



床置きされた二点の立体と壁際の灰で構成された、「
現象」です。



右側の壁面に設置されている立体は、「現象 piece1」です。
(手前の二点は上の画像と同じ作品です。)
画廊内の展示は以上の四点です。

本展のサブタイトルはphenomenonです。
phenomenonとは、現象、事象を意味します。
展示の四点は、作品タイトルでは二つに分けられていますが、一点のインスタレーションと考えても差し支えないと思います。



床置きの二点です。
左は小さな鉄の片を溶接したもので、芯まで鉄が詰まっています。
相当な重さです。
右は木が芯になっていて、それに釘を打ち付け、小さな鉄片を溶接したものです。



左は壁際に置かれた灰です。
木を燃やしてできた灰です。
右は、床置きの木の作品にあった枝を芯にした作品です。
枝を芯にして釘を打ち、鉄片を溶接したものです。
枝は周りの形ができた時点で燃やされています。
床置きの作品と違い、中は空洞になっています。


展示作品の中で目を引くのは、鉄片を数限りなく溶接した鉄の塊です。
この形は、喩えようがありません。
ただそこにある、鉄の塊です。

黒田さんの作品の根底にあるのは、生と死ではないでしょうか。
象徴的なのは、木の生と死です。
木は無機物である鉄に囲まれて生き、死を迎えるとその形を無くしますが、無機物の灰に(形を)変化します。
そのサイクルが「現象」の実体かもしれません。

では、鉄の塊は何でしょうか。
これも「現象」です。
現われるもの、としての現象です。

黒田さんは約一年かけてこの作品を作りました。
毎日毎日少しづつ鉄片を溶接していったそうです。
最終的にどのような形になるかは考えていなかったそうです。
少しづつ変わる形に触発され、鉄片を溶接していきました。
そして、展覧会の出品期限で制作を打ち切りました。

この形は、黒田さんの生そのものではないでしょうか。
だから、喩えようがないのです。
恐らく、黒田さんは生の実感を形にしたかったと想像します。
予め予想された(形としての)生ではなく、日々の営みが育んでいく生。
その現われを、形にしたかったのではないでしょうか。

このことに意味があるのかどうか、それは一つの疑問です。
わたしは意味があると思います。
通常わたし達が生を認識しているのは、広い意味での情報です。
その情報には、実体や実質が欠けています。
それは実体、実質のイメージだったり、輪郭を表す数値に過ぎません。
わたし達の時代の不幸は、実体、実質が見えない不幸です。

鉄片を日々溶接していく。
鉄片の集合は形になり、形は日々変わっていく。
それは紛れもない、実質、実体の現われです。
イメージや数値ではない、実体、実質の「現象」です。


会期

2006年3月6日(月)-3月11日(土)


11:30am-7:00pm(最終日6:00pm)


会場案内