熊谷美奈子展の展示風景です。
床置きされた、舟のような形の作品。
シャープなラインが美しいですね。
この作品は、厚紙、手漉和紙、アクリル 、ジェッソ、グラファイトクレヨン、澱粉糊 などを使用しています。
簡単に説明すると、厚紙の型に手漉和紙を貼り、上面はアクリル絵具とジェッソでペインティング、下面はグラファイトクレヨンで描かれています。
グラファイトクレヨンは、鉛筆の芯のクレヨンで、鉛筆よりも濃いタッチが可能です。
同じく床置きにされた作品です。 この作品の表面はグラファイトクレヨンで描かれています。 まるで、金属のような質感ですね。 |
展示の全体をご覧いただきます。
画廊入口から見て、正面の壁面方向です。
壁面の作品は、左五点が「White Middle Egg 」シリーズ、 右三点が「White Small Egg 」シリーズです。 床の作品は、左から時計回りに、 「彼岸行きの舟」、 「Black and White」(三点)、 「White」(二点)です。 |
左側の壁面方向の展示です。
画面上の壁際の四点が未紹介の作品です。 左から、 「Small One I」、 「Black」(二点)、 「Small One II」です。 以上が画廊内の展示で、その他道路側ウィンドウに三点の展示があります。 |
作品の使用素材(画材)に若干の違いはありますが、多くは先にご紹介したものを使っています。
壁面の作品です。 この「White Egg」シリーズは厚紙を使用せず、手漉和紙で形が作られています。 道路側ウィンドウの三点は、「Black Egg」シリーズで、タイトル通り黒い作品です。 |
金属のような立体と、半身を白くした作品は前回個展からの継続ですが、ペインティングが変化しています。
サラダボールのような形状ですが、内側に描かれているのは、絵画です。 外側も絵画です。 立体形式の作品ですが、絵画でもある作品です。 ここで形式を云々するのは、無意味かもしれません。 |
もう一度、「彼岸行きの舟」」を見てみましょう。
斜からの撮影ですが、この作品の独自性がお分かりになるでしょうか。
他の作品のタイトルが抽象的、即物的なのに対して、上の作品は具体的です。
「彼岸行きの舟」。
つまり、生と死を繋ぐ舟の意味です。
熊谷さんの作品の特徴は、相反するものを無理なく一体化させていることです。
例えば、硬(金属)と軟(紙)、黒と白、表と裏、生と死などです。
立体と絵画も、そうですね。
上の作品は舟にも見えますが、種子の莢(さや)にも見えます。
種子は生命を宿しているので、生の起源です。
死出の旅となる舟は、彼岸(死の世界)に向かっています。
表面は紙に描いた絵画で、裏面は硬質な金属の表情を持っています。
この東洋的ともいえる思考の表現は、とても自然に為されています。
まったく無理がない。
融合ではなくて、相反するものが同時に存在することの自然さがあります。
思考と技術も一体化していて、とてもリラックスさせてくれます。
ご高覧よろしくお願いいたします。
2004年藍画廊個展
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