矢作隆一展の展示風景です。
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上左は、正面と右側の壁面です。 右は、左側の壁面。 下は入口横右の壁面です。 302枚のポートレイト写真(モノクローム)から構成された展覧会です。 一点のサイズは、100(H)×100(W)×25(D)mmです。 |
この展覧会の副題は「〜グアダルーペを探せ〜」ですが、グアダルーペとは何のことでしょうか。
矢作さんがプレス向けに記したコメントがありますので、全文引用させていただきます。
約10年前からメキシコに住むようになりたくさんのメキシコの人に出会ってきました。
メキシコの国教がカトリックということもあり、それにちなんだ聖人の名前を持つ人がほとんどです。
その中にメキシコ特有と言ってもいい名前があります。
それがグアダルーペです。
聖母グアダルーペはPatrona de Mexicoと言われるくらいメキシコに根付いている名前です。
(私の作品にはとくに聖母グアダルーペの宗教的意味は含まれてこないので説明は省きます。)
私はこのグアダルーペという名前を持つ人たちに気にも止めないうちにけっこう知り合っていました。
日頃から身の回りの「日常」の中から作品を熟考していることもあり、この名前に興味を持ち始め、自らグアダルーペさんを捜すようになった次第です。
このプロジェクトを進めて行くに連れて、現在のメキシコのあり方、そしてこれからのメキシコがグアダルーペさんを通して見えてくるのではないかと私かに考えています。
今回は私の住んでいるベラクルス州ハラパ市をはじめ、北は第2の都市であるヌエボレオン州モンテレー市に隣接したグアダルーペ市、南はチアパス州チアパデコルソー市のグアダルーペさんの写真を合計約300枚展示します。
グアダルーペとはメキシコの人の名前だったのですね。
会場内に貼付された文章にはもう少し詳しく書かれていて、この名前は(聖母から採られているので)女性が多いそうです。
ポートレートを見てみると、確かに圧倒的に女性が多く登場しています。
そして、この名前はいささか古い響きがあって、最近では流行らないそうです。
ポートレイトの展示に近づいて見ました。
老若男女、いろんな顔が写っています。
メキシコ人特有の体形からか、若干ポッチャリした人が多いですね。
この302人の共通点は名前で、グアダルーペです。
名前には社会的な意味があって、スペインの征服、キリスト教の布教がきっかけになっています。
キリスト教徒と土着宗教の混交から生まれたのが、聖母グアダルーペです。
グアダルーペに限らず、名前はその時代の社会を映す記号といった側面があります。
名前のはやり廃りは、そのことを表しています。
一方で、顔(形や目鼻立ち、髪形、メイク)にも社会性(地域、時代)があります。
ファッションもそうですね。
いかにもメキシコらしいグアダルーペという名前。
その名前を持つ302人のポートレートから、朧げに浮かんでくるのは、メキシコの過去と現在と未来です。
気負いなく撮影したポートレートからは、撮影者とグアダルーペの間にある良好な空気が伝わってきます。
それも、恐らくはメキシコの風土が生んだものでしょう。
矢作さんが写し取りたかったのは、そんな風土と人間の愛すべき関係だと想像します。
会場に展示、即売されているビニールバッグ。 メキシコの年末、年始に商店で配られるショッピングバッグです。 一年間の御礼として無料で配られます。 (プリントは矢作さんが施したものです。) ご高覧よろしくお願いいたします。 |