小山基義展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 | |
入口横右の壁面です。 |
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左側の壁面です。 |
上の画像を見ると、展覧会は彩色されたバーによる構成と一点の平面の展示を想像させます。
実際は、赤いインクとOPPシートで成り立っています。
OPPシートとは、花束を包む透明のフィルムのことです。
花屋さんで花束を注文すると包装してくれる、あの透明なシートのことです。
赤いインクは、パイロットの定番インクで、添削のあの赤インクです。
0.025mmという薄いシートを一定の幅(15mm)にカットして、細いテープにし、それを重ねて、赤インクで着色します。 着色は、(正しくは接着で)インクがテープに付着したような状態です。 そのテープのブロックのピースで構成したのが、今回の展覧会です。 左は、壁に向かってテープが直角に立って重なっている状態です。 見えているのは一枚一枚ではなくて、重なって束になったテープの連続です。 |
OPPシートと赤インクを使用した理由は、それが日用品だからです。
特殊な画材ではなく、ありふれた日用品を使うことで、作品を身近なものにするためです。
重ねた細いテープのバーで構成された空間を切り取ったショットです。
画廊の白いキューブを一枚のキャンバスに見立てて、持ち込んだ(テープの重なった)ピースが空間を構成しています。
ピースはバー状のものが九点、平面状のものが一点です。
(その他、額装した作品が道路側ウィンドウに一点、芳名帳スペースに二点展示されています。)
構成は画廊の造作と対話しながら、形作られていきます。
例えば、このバーのトップの位置は、画廊の照明用レールの影を基準にしています。 赤いバーのトップの左に、薄い影が横方向に映っているのがお分かりでしょうか。 |
一枚一枚の細いテープを繋げてみると、何と4000メートルになるそうです。
シートの裁断はカッターとスケールによる手作業です。
気の遠くなるような作業ですが、作業を続けていくと、この単調で退屈な仕事が一種の快感に変わるそうです。
裁断は細心の注意を払って行いますが、大量にテープを重ねてみると、どうしても不揃いになってしまいます。
その不揃いも、作品の一部です。
日用品を用いて、その場所でしかできない作品を作る。
しかも、その日用品は日用的用途とは違った使い方をする。
場所にも日用があって、人は何となくその日用に従ってしまう。
だとしたら、日用ではないところに目をつけて、そこから作品を作ってみる。
それは日用の変容ですが、日用の変容は日常の変容です。
日常の変容とは、日常を違った次元から見直すことです。
だから、貴方の部屋と小山さんが変容させた画廊空間はメビウスの輪のように繋がっているのです。
美術が深遠な理由(わけ)は、案外その近さにあるのかもしれません。
ご高覧よろしくお願いいたします。