蔵前浩展の展示風景です。
画廊入口から見て、正面と右側の壁面です。 左から、タイトル「1009」で、サイズは182×80.5cm、 「1013」で、181.5×73.3cm、 「103」で、231.5×123.5cmです。 |
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入口横右の壁面です。 「211」で、210.2×89cmです。 (左の作品は上でご案内した「103」です。) |
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左側の壁面です。 左から、無題で24×23cm、 無題で、24×22.5cm、 「107」で、236×91.3cmです。 数字のタイトル作品はパネル・綿布・油彩で、無題の二点はエッチングです。 |
以上の七点が画廊内の展示で、その他道路側ウィンドウに一点(紙、鉛筆)の展示があります。
展示作品から数点をピックアップしてご覧いただきます。
左壁面の「107」です。
上下にセパレート(分離)された二つの画面で構成された作品です。
この手法が蔵前さんの作品の大きな特徴です。
作品は、最初から一つの作品になることを念頭において、二つの画面を制作しています。
偶発的にドッキングさせたものではありません。
画面を縦断している無数の点は、二つの画面を繋いでいます。
同じタイプのセパレートの作品です。
入口横右の「211」です。
上の画像は同系色でしたが、こちらは対照的な色相の二画面で構成されています。
画面のパースが、上は奥に引き込む感じで、下は前に出てくる感じですね。
正面壁面の左の「103」です。
この作品もセパレートですが、上の二点とは違うタイプです。
要素として副題的位置だった無数の点が主題になっています。
部分のクローズアップをご覧下さい。
点が無数描かれています。 描き方もペインティング(塗る)というより、ドローイング(描く)といった感じです。 二つの画面の関係から見ると、上の画面では集積した点の動きに上昇感があり、下は下降する動きになっています。 又、左壁面の二点のエッチングの作品は、点だけで構成された作品です。 |
複数のセパレートされた画面で一つの作品を構成するのは、1980年代のニューペインティングでよく採られた手法です。
ですから取り立てて珍しい方法ではありません。
問題になるのは、手法のはやり廃りではなくて、形式と内容の関係の必然性です。
蔵前さんの作品は、制作の出発点から二つの画面の対比と連続があります。
つまり彼にとって、セパレートは変則ではなくて、(それ以外は考えられない)ごく普通の表現です。
比喩的にいえば、モノラルではなく最初からステレオ的録音(描画)といえるかもしれません。
色と形、地と図、面と点が複雑に響きあいながら、ステレオはステレオになったり、モノラル的ステレオになったりしています。
この変化の行方も、蔵前さんの作品の魅力です。
ご高覧よろしくお願いいたします。