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『Apple』


まずは、苦言です。
今日発売されたiPadの騒動。
たかがニュータイプのデバイス(端末)に、あの行列と報道。
ダンスを仕掛けたのはAppleで、踊らされたのは消費者とマスコミ。
二年前のiPhoneの時と同じです。

iPhoneやiPadがいかに優れたデバイスであったにしても、あのAppleの演出と秘密主義には賛成できません。
あの手のお祭り(イベント)が好きな人がいるのは分かりますが、仕掛けが露骨すぎます。
消費者の物欲を過剰に煽るような販売方法は止めて欲しいものです。

とまあ、いきなり悪口から始まりましたが、わたしは長年のMacユーザーであり、Apple社には相当のお金を払っています。
Apple社のプロダクトも(欠点が多いにせよ)愛用しています。
そもそもは妻が経営する藍画廊でMacを使用していたのが始まりで、それならば当然Macということで十数年ほど前に購入しました。
だから偶然Macであったわけです。
どうしてもMacという積極的な理由は、藍画廊以外にはありませんでした。



その当時のコンピューター業界は小規模なもので、インターネットもほとんど普及していませんでした。
パソコン通信全盛時代で、多少オタク的雰囲気がありました。
その業界に、あのビートルズの設立したレーベル(会社)と同名の会社があった。
しかもそのロゴマークときたら、陳腐なレインボーカラーに彩られています。
その当時のわたしは、Apple社の思い上がりとセンスのなさに憤慨したものです。
(それでも業界では、Appleはデザインの良い会社として有名でした。)

しかし、時代というのは変わるものですね。
今やビートルズのAppleの方が圧倒的にマイナーで、会社の規模(売上)も比較になりません。
(ビートルズが作った会社、Appleが現在存在するかどうか不明ですが。)
しかもその逆転のきっかけになったのが、音楽のiPodというのも皮肉といえば皮肉です。
そしていまだに、ビートルズの楽曲はオンラインで販売されていません。
販売が開始されれば大きな話題にはなるでしょうが、AppleといえばiPodやMacのAppleという代名詞に変化は起きないでしょう。



昔話(といっても10年ほど前の話ですが)を続けます。
今回の話の本題で、それは美術作家のHさんのメールの思い出です。
Hさんとは当時メールのやりとりをよくしていて、わたしはiGallery、彼はメールマガジンで発信していました。
Hさんの風貌は色白の優男ですが、内実は熱血漢で、何事についても熱い人でした。

そして彼はMac愛好家で、当時(も今も)デファンクトスタンダードあるWindowsに敵愾心を燃やしていました。
あの頃はまだWindowsとMacの優劣論争が盛んで、Web上でも論争や嫌味のやり取りがよく見受けられました。
Hさんは、あるときメールで、「ペプシがコカコーラを逆転したように、将来Appleは絶対Microsofを抜きます。僕はそう信じています」と熱く語りました。
わたしはメールを読んで、一笑に付しました。

MicrosoftとApple、月とスッポンじゃないですか。
どう考えても逆転の目はない。
そのメールの前後辺りに、倒産寸前のAppleはIEをデフォルトブラウザにすることとバーターで、Microsoftから資金援助を受けたばかり。
しかもHさんが喩えた、ペプシのCEOをAppleが引き抜いて、それでもAppleの業績は上がらなかったのです。
だから、Hさんの気持ちは解りましたが、それは妄想に近いものであって、現実性はゼロと同じでした。

ところがところが、です。
iPodで一山当てたAppleはあれよあれよという間に業績を伸ばし、方やMicrosoftはウィルスに手を焼き、Vistaでこけて、背後にはGoogle。
そして、昨今のiPadの過熱報道の片隅にはこんな記事が。
『Apple、株式時価総額でMicrosoftを抜く』。
つくづく思いました、時代って、変わるものですね。
Hさん、バカにしてゴメンナサイ。
あなたの予言は的中しました。



株式時価総額と、会社の規模とか損益が同じなのかどうなのか、よくわかりません。
株式時価総額というのは、会社の大きさを測る一つのメジャーに過ぎないかも知れません。
それでも、あのAppleがMicrosoftを抜いたのは事実です。
恐るべきHさんの未来洞察力と執念(?)です。

Appleに抜かれたといってもMicrosoftはMicrosoftです。
WindowsとOfficeで利益を確保しています。
しかし会社に勢いがないのは事実です。
IT業界の勢力図の中心から外れています。
今やAppleとGoogleとの戦い、そしてFlashを巡るAppleとAdobeの確執に注目が集まっています。
つまり次のステップのプレーヤーに入り損ねているのです。
(そういえば残念なことに、GNU/Linuxもデスクトップ分野では期待外れに終わっています。)



Appleという会社はヘンな会社です。
明るくオープンなイメージでありながら、クローズドな政策や極端な秘密主義を持っています。
それでも、ユニークでスタイリッシュなプロダクトをリリースする会社であることは、衆目の一致するところです。
ただし、ユニークでスタイリッシュが過ぎて、そこここに欠点も見受けられます。
以前ブログで誉めたワイヤレスのMagic Mouseですが、スクロールが敏感すぎて細かい作業には向きません。
それさえなかったら、最高のマウスなのですが。
(同じくワイヤレスのキーボード、テンキーが無いのが致命的。)


お祭り騒ぎのiPad。
そのうちAppleストアで触ってみます。
それこそ百聞は一見にしかずですから。
今回はiPadの発売に合わせて、個人的なAppleへの感慨を書かせていただきました。
しかししかし、時代は変わるものですね。
十年後、どうなっているでしょうか。