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『Living In The Material World』


『Living In The Material World』は、ジョージ・ハリソンが1973年に発表したソロアルバムタイトルで、同名の曲も収められています。
『Living In The Material World』を直訳すれば、「物質世界に生きる」になります。
意訳すると、「物質文明の世界に生きる」でしょうか。

そのジョージの曲名を展覧会名にしたのが、国立新美術館の開館記念展です。
日本語では『20世紀美術探検-アーティストたちの三つの冒険物語-』になっていて、英語で併記してあるのが、『Living In The Material World "Things" In Art Of The 20th Century And Beyond』です。
曲名の引用については、図録の序文に明記されています。



国立新美術館のIFロビーです。
この日は地下鉄千代田線乃木坂駅の美術館直結出口から入館したので、外の様子(外観)を見れませんでした。
掲載する画像は内部だけです。
特にワクワクするような建築でもなく、ご近所の六本木ヒルズのタワーと同じような印象を受けました。
(夫人の若尾文子さんは色気のある女優さんですが、黒川紀章さんの建築は、色気がないですね。)

ジョージの『Living In The Material World』は、物質文明の空しさと精神世界の豊かさを歌った曲ですが、物資文明を想起させるような建物で同名の展覧会が開催されるのは、何とも皮肉なものです。
(建築コンセプトは想像と異なるでしょうが、そう見えてしまいます。)
しかし、展覧会そのものは壮大な試みで、モノ、物質(と人間)を軸に20世紀を回顧したものです。
広い展示空間に膨大な数の作品が展示され、20世紀と美術を解析しようとする野心に溢れています。



展覧会を見る前に、お腹が空いていたのでレストランへ。
JRで上京したのですが、途中で人身事故の為に電車が遅れ、お腹がペコペコだったのです。
レストランは、
『ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ』。
食事ができるのは、ここしかありません。

上の画像の真ん中(吹き抜けに突き出している円柱の頂上)がレストランで、例の三つ星に輝くフランス料理のお店です。
価格が少々高いのは、ここが観光スポットだから致し方ありません。
店内とサービスはカジュアルですから、店名に恐れをなす必要はありません。

さて、お腹も良くなったので、展覧会場へ。
ゆっくり見たら半日もかかりそうな会場で、(時間がないので)急ぎ足で回りました。
収蔵を持たない美術館の所為か、作品の収集には力が入っています。
相当な準備期間を要した展覧会です。



一番印象に残ったのは、会場途中で放映されていた『第三インターナショナルのモニュメント』と、最後の高柳恵里さんの作品。
特に生花の作品は藍画廊の再制作で、個人的に親しみがわきました。

急いで回った展覧会なので、内容についてはこれ以上触れません。
見て損はない展覧会と思いますので、ご興味のある方はどうぞご覧になって下さい。
わたしも、再見するつもりです。

国立新美術館は六本木にあります。
六本木には森美術館があって、三月にはサントリー美術館も開館します。
アートトライアングルと称される一帯になります。
一方で、六本木は新たなビジネス拠点として注目を集めています。
情報通信と金融の会社がヒルズと完成予定の東京ミッドタウンに集まっています。

一昔前の80年代バブルの夜といえば、六本木でした。
ディスコやクラブ(オネーさんがいる方です)が全盛で、不夜城の街でした。
それとは別に、今はなきWAVEやシネヴィヴァン、俳優座のシネマテン、もっと遡れば自由劇場といったアート、アンダーグラウンド系の顔も持っている街でした。
新宿辺りに比べれば、幾分上品であっても、刺激があったことは確かです。

今の六本木と昔(80年代)の六本木。
わたしは後者の方が好きです。
馬鹿騒ぎの馬鹿さ加減を承知していても。
何とはなく、今の六本木には足が向きません。

多分、大手デベロッパーの再開発が嫌いだからです。
街を計画に沿って作るやり方が、気にくわないのです。
文化とか寛ぎを要所要所に配置して、街の体裁を繕うのが、ダメなのです。
意図的なムダは、本来のムダとは違うと思うのです。



とまぁ、グダグダ心の中で呟いていると、もう外は夕闇です。
早く画廊に帰らなければなりません。
今日(月曜)はオープニングの日で、今日から始まる展覧会が待っています。
カメラの前方には、急ぎ足の画廊オーナー(妻)の姿が。
しかしまぁ、この人はどうしていつもあんなに荷物を持って歩いているのでしょうか。