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光の河


地方都市にはバイパスと呼ばれる幹線道路があります。
わたしの住居の近くにも甲府バイパスが通っています。
この道は、昼間は産業道路として仕事のクルマが大量に行き来しています。
ロードサイドにはファミリーレストラン、大型量販店、パチンコ店、カーディーラー、中古車販売センターなどが軒を並べています。
昼間、これらの店はクルマの騒音に比べ何となく大人しい佇まいを見せています。
しかし、夜になると一変します。
クルマのヘッドライトとテールライトを圧倒するかのような輝きを一斉に放ちます。
クルマの光とそれらが渾然となって、まるで光の河が出現したかの様です。
クルマでその流れにノルのは飽きましたから、わたしは自転車で光の河を上ってみました。
クルマがモーターボートなら、自転車はカヌーみたいなものです。
緩急をつけながら自在にその流れを上ってみました。
写真を撮るにも、それの方が都合が良いですから。


これは現在甲府バイパスの中心になっている国母交差点付近です。
ここが甲府で一番の繁華街といえます。
といっても歩いている人は殆どいません。
クルマで各店舗の駐車場に行き、人はそこから店まで歩くだけです。
人の多くははクルマのウィンドウ越しか、お店のガラス越しににしか見えません。
クルマの放つ騒音と光の渦が交差点を満たしています。


わたしの、カヌーによるナイト クルージングはパチンコ店に焦点を定めました。
なぜならパチンコ店の広告塔が、この光の河でもっとも大きな強い光を放っているからです。
その眩しい光は小さなカジノを連想させます。
光の河にはカジノが点在しています。
これはどの地方都市にも見られる風景です。


このお店の広告塔はオシャレです。上の部分が回転します。
店内も洗練されていました。
80年代のカフェバーで一世を風靡した空間プロデューサーは、バブル崩壊後こっちの業界に流れたそうです。
多分この店舗は空間プロデューサーが関わっていると思います。


さて、次は大きいですよ。
スクロールしないと全部は見れないかもしれません。


この広告塔がこの光の河で一番大きいと思います。
下の二階建ての店舗から大きさを想像して下さい。
これも上の丸い部分が回転します。
丁度広告塔の前に歩道橋がありましたので、そこから撮影しました。
聞いた話では、この広告塔の電気料は1ヶ月百万円だそうです。
ビックリしました?



さて、上の二つは同じ名前のパチンコ店ですが、場所は違います。
左は珍しく回転機構が付いていません。
ネオンの点滅だけですが、結構目立つデザインではあります。
右はグルグル全体で回ります。
スケルトン(トランスルーセント)仕様で中の光源が見えて楽しい仕掛けになってます。
今はグレープ状態。
たしか、ラズベリーとかライム状態もあったような。
カタチはCubeですよね。



光の河にはホンモノの川が何本か交差しています。
その交差する場所は当然橋なのですが、クルマで通行すると橋に気がつきません。
自転車を止めて、下を流れる川をぼんやりと眺めているといろんな事が頭を過ります。
形態が多少変わったとはいえ、川は昔と同じ表情をしています。
川は上の光が届かないために暗い墨絵のようで、音を立てずに流れています。
わたしが光の河を上りきって帰路についた時、その光景が一番印象に残りました。



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