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「無用の長物」


最近テレビを見ていると、通販(通信販売)番組の多いことに気がつきます。
専用のチャンネルもあるし、普通の番組の中に、テレビCMとは違う形で通販が組込まれていることもあります。
通販の媒体は、雑誌、カタログ、ラジオ、テレビ、インターネットと各種あります。
昔からあったのは雑誌の通販で、大昔、二流週刊誌の背表紙に必ず腕時計の通販があったのを憶えています。

媒体が各種あれば商品にもいろいろあって、大手メーカーの電子機器やカメラから、怪しげなネックレスや石まで幅広くあります。
通販専用の商品も数多くあって、これも信用度はピンキリです。
期間や数量限定でオマケが付くのも通販商品の特徴で、一見得なように思えますが、よく考えれば得でも何でもありません。
最初からオマケ込みで付けられた価格を提示しているに過ぎないからです。

通信販売の厖大な商品群に、健康器具というジャンルがあります。
代表的なのは、大ヒットしたルームランナー。
雨の日でも、風の日でも、室内で快適にテレビでも見ながらランニングが出来る健康器具です。
これを知らない人は日本人ではない、といってもよいくらい有名な器具です。



上の画像(ちょっとピンボケ)はルームランナーではありませんが、その系譜を引く健康器具ロデオボーイ(RODEO BOY II)です。
これが最近わたしの部屋に鎮座しています。
その経緯や使用感に関しては後ほど書くことにして、もう少し通販の話を続けます。

前述したように通販には各種の媒体、商品があります。
WebのAmazonなどで販売しているものは、まともな商品が多く、扱っている商品数の多さや、24時間営業、即配などが特徴です。
ニッチな商品も扱っていますが、基本的には通販専用商品の扱いは少ないといえましょう。
通販専用商品には、魔法のような利便性とか、安楽に美しくなれたり、痩せられるといったような、画期的な性質のものがあります。
その画期性は嘘と誠の間にあって、本当かしらと思いながら、ついつい引き寄せられしまいます。



テレビショッピングの通販を見ていると、そのルーツは大道の物売りにあるのではないかと想像させられます。
ガマの油売、バナナの叩き売りに代表されるアレですね。
口上、話術の巧みさで客を引き寄せ、商品を買わせる商法です。
そのノウハウと怪しさが、テレビショッピングに引き継がれています。

魔法のような洗剤、調理機器はどうして大手のメーカーが発売しないのか。
そう思うのはわたしだけではないはずです。
それを見た人は、誰でも不思議に思うでしょう。
どうやら、そういう商品はそういう専業メーカーが作って、そういう問屋を通して、通販専門業者で販売されるようです。
通販という販売ルートがまず最初にあって、そこから商品開発が始まるようです。
その辺りに謎の答えがあって、大手とは別個に通販業者には通販業者の市場があって、棲み分けが出来ているようです。

先ほど通販商品の画期性は嘘と誠に間にあると書きました。
これを喩えると、プロレスに似ていると思いました。
最近はいろいろなプロレスがあって、一概にはいえませんが、ここでのプロレスは力道山系譜のものです。
真剣勝負なのか八百長なのか、その境で繰り広げられる、上質なエンターテインメントとしてのプロレスです。
虚と実が入り交じった、伝統的なプロレス。
それとテレビショッピングの(ある種の)エンターテインメントに、同質なものを感じます。
(と書くと、通販業者に怒られるかもしれませんが。)



プロレスからの連想ですが、わたしが大学生のころ(40年前)ブルワーカーという健康器具が流行りました。
長さが70cmぐらいの棒状の器具で、伸縮を利用して筋肉を鍛えます。
当時の広告モデルはカシアス・クレイ(モハメド・アリ)でした。
セールストークは、1日5分で貴方も筋肉モリモリ。
薄い胸板に悩んでいたわたしは、それを通販で購入して、早速使い始めました。

しばらく使っていると、その効果が出たようで、銭湯で友人に「何となく筋肉付いたね」といわれました。
しかし記憶にあるのはそこまでで、その後ブルワーカーがどうなったのか不明です。
恐らく使ったのは数ヶ月で、押し入れで眠っていて、引越の際に不用品として処分したと思われます。
ブルワーカーは長寿商品で、Webで検索をかけたら、今でも販売されていました。

さて、ロデオボーイ。
これは買ったのものではなく、妻がとある集いのじゃんけん大会で勝ち取ったものです。
ですから単なるロデオボーイとは違う、優勝賞品なのですが、使っている様子がありません。
それで、アパートの引越を機会に、山梨のわたしの部屋に運び込みました。



わたしは腰痛持ちで、腰痛対策には腹筋、背筋を鍛えることが肝要です。
ロデオボーイは乗馬を模したフィットネス機器ですが、腹筋、背筋の強化には効能がありそうです。
しかもテレビを見ながら、iPodを聴きながら、苦痛が少なく安楽に身体が鍛えられそうです。
1日たったの15分で、腰痛の悩みから解放されるかも・・・・。

使い始めてみると、その15分が結構長い。
テレビを見ながらやっていても、なかなか時間が経ちません。
15分も続けるには、かなり辛抱しないといけません。
無理して頑張るとお尻が痛くなってきます。

安楽な予想とは違った使い勝手でしたが、ここで挫けては運んだ甲斐がありません。
5分程度ならガマンできるので、1日何回かに分けて乗ることにしました。
(定かではありませんが)腹筋と背筋に若干の効果があるような気もしますし、運動量も多少あります。
とりあえずはこのペースでやってみて、徐々に一回の時間を長くする予定です。


つい先日、学生時代の恩師の展覧会を見に荻窪に出掛けた帰り、とあるリサイクルショップの店頭の商品が目に飛び込んできました。
我が家と同じロデオボーイ(RODEO BOY II)が、ショーウィンドウの中央に燦然と輝いています。
驚いたのは価格で、あの大きさと機能で、何と3400円!
定価の十分の一以下の、投げ売りのような価格です。
状態も新品同様。
恐らく、買ってはみたものの、使ってみたら思っていたような使用感、効果が得られず、即売りに出されたものでしょう。
何やら、不吉な予感が・・・・。

通販商品には夢のような部分があります。
しかし通販商品の夢は、破れる時は呆気なく破れます。
その夢が大きかった分、無用となった商品はより長物になります。
狭い住宅環境の中の、無用の長物。
不用な健康器具ほど、無用の長物という言葉が似合うものはありません。
邪魔な上に、処分にも手間がかかる。

ロデオボーイ、そうならないよう頑張ってみるつもり、です。