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セーター家の人々(1)


こんにちは。
ボクは赤Vです。
赤Vとは、赤いVネックのセーターのことです。
そう、ボクはセーター家の一員です。



ボクのポートレイトです。
撮ってくれたのは、ブルータートルです。
彼は淡いブルーのタートルネックで、セーター家のフォトグラファーです。
では、彼のセルフポートレイトもどうぞ。



どうですか、セーターって綺麗でしょう。
頬でスリスリして、顔を埋めたくなりませんか?
あの香りと感触に、貴方はセーターをハグハグしたくなったハズですよね。
それでは、セーター家へご案内します!

さて、今回から数回に渡ってセーター家の人々をご紹介したいと思っています。
紹介するのは、テキスト担当のわたし赤Vと写真担当のブルータートルの二人です。
よろしくお願いいたします。

セーター家といっても、お父さんやお母さんがいる本当の家族ではありません。
セーターが集まって家族のような集団を作っているだけです。
でもみんなは、家族のようにとっても仲が良いんですよ。
たまには小さなケンカとかありますが、誰かが仲に入ってすぐに仲直りします。

わたし達セーターは人間ではありませんから、人々とか一員と形容するのは本当は間違いです。
でもそれは人間の家族に憧れているから、そういう言葉を使っているのです。
どうか、気にしないで下さい。

わたしたちセーター家のご主人は独り住まいです。
何やら調査のような仕事をしていて、休日以外は事務所に出勤しているか、外に出掛けています。
ご主人がいなくなるか寝てしまえば、家はわたしたちの自由です。
もちろん、家の中にはセーター家の他にもいろんな家族、集団がいますから、それぞれがぶつかることなく上手くやっています。

わたし達が活躍するのは冬場ですが、夏場は夏眠(?)していわけではありません。
来るべき冬に備えて体力を温存させながら、もっぱらお話をしています。
夏でも活躍する綿のセーターがありますが、彼らはわたし達ウールとは別の家族になっています。
いずれご紹介しますが、綿とウールのセーターは近しい親戚のような関係です。



わたしとブルータートルのツーショットです。
カメラをセットしてセルフタイマーで撮りました。
セーターには男性用と女性用の区別がありますが、それとセーター自身の性別とは一致しません。
与えられた性別には関係なく、セーターは自分の性を勝手に決めています。
自分自身に相応しい性を決めて、それをわたし達は楽しんでします。

そんなわけで、ボクは男ですが、ブルータートルも男です。
ボク達は恋愛関係ではありませんが、もしそうならば同性愛です。
しかし、セーターの場合は同性愛も異性愛もありません。
好きになれば、あるのは愛情だけです。
これは人間よりも自由ですね。



続いては、ブルータートルが密かに思いを寄せている、橙V です。
美人、です。
しかも傍にいるだけで心が温まりそうな、色と風合い。
彼女がやって来たのはつい最近ですが、みんなの注目です。

一目ぼれしたブルータートルは、撮影を口実に彼女に近づきました。
(彼がいつも使っているカメラは、ご主人のものの借用ですが、とても丁寧に扱っています。)
暖かい陽射しが入る窓辺に彼女を座らせて、そっとシャッターを押したのがこの写真です。

ご主人も橙Vがお気に入りで、よそ行きのセーターとして愛用しています。
ところで、ご主人(人間)と美しいセーター、どちらが主役でしょうか。
当然人間は自分だと思いますが、実はセーターを主役にしなければ、本当のオシャレになりません。
人間は出来るだけ存在を消して、セーターの美しさをアピールする。
これが、オシャレの本質です。

それはわたしの意見ではなく、ご主人の読んでいた本に書いてありました。
(ご主人が本を読んでいれば、ついでに、わたし達も本を読んでいます。)
ーオシャレとは、その人の個性を際立たせることではなく、いかに洋服を美しく見せるかである。
故に、邪魔な個性を消すことが重要である。ー
その通りですね。
最近の若者がオシャレ上手なのは、センスの所為ばかりではなく、個性を消すのに長けているからです。
そうでなくても、(良くも悪くも)若者の個性は薄くなっています。

では、二人のツーショット。



恥ずかしいのか、ピントを外していますね。
でもこういう撮り方は、ブルータートルの得意とするところです。
彼はセーターで絵を描こうとしています。
その為に、いろいろな方法を試しているようです。
次回はどんなセーターが登場するか、お楽しみに。