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Station


わたしは週に一度、山梨から上京しています。
主なる目的は画廊で展示撮影をすることです。
撮影自体は三十分もかかりませんが、作家の方と話をしたり、用事を足したりしているうちに半日が過ぎます。
上京は、以前はクルマオンリーでしたが、最近は電車と使い分けています。

電車の利点は、景色が見えること、居眠りができること、音楽(iPod)に集中できること、画廊のオープニングや二次会で飲めること。
欠点は、時間に縛られること、帰りの車窓が真っ暗で景色が見えないことです。
特に後者の景色が見えないのは、とても辛く感じます。
閉所恐怖症の気があるかもしれません。

電車は新宿で中央線に乗り換え、東京駅で下車します。
帰りは、東京駅始発の特急で山梨まで直行します。
そんなわけで、東京駅は身近に感じるStationです。

いつものように撮影を終えたわたしは、閉廊後、妻と食事に出掛けました。
珍しく、食べたいものが決まっていました。
久しぶりに焼肉が食べたくなったのです。
それも流行のライトな焼肉店ではなく、昔ながらの焼肉屋に行きたくなったのです。

有楽町駅の高架の二階にある焼肉屋で食欲を満たし、時間があるので、東京駅まで歩くことにしました。
風も涼しげで、少し遠回りして丸の内仲通りを行くことにしました。
人も疎らでショップも店じまいの時間帯でしたが、それがかえってそぞろ歩きには好適でした。



仲通りを真直ぐ行って、丸ビルで右に曲がれば東京駅です。
まだ電車の時間まで少しあります。
お茶を飲むことにしました。
さて、どこで飲んだら良いのか。
駅の構内にも沢山ありますが、もうちょっと落ち着けるところが・・・・。
そこで、新丸ビルのティルームに行くことにしました。

レストランゾーンの最上階の七階に上ると、そこには共有のテラスがありました。
フロアのショップでドリンクを購入し、外に出て、しばし夜景を愉しむことにしました。
テラスは、東京駅に面した部分が最も広く、ライトアップされた東京駅と周辺の高層ビルを見ることができます。



画廊で撮影用に使うカメラを持っていたので、観光客よろしく、手すりに身を預けて撮影してみました。
上は東京駅丸の内中央口です。
オレンジ色にライトアップされた東京駅はとても美しく、色も形も、周囲の高層ビルと好対照です。
撮影しながら眺めていると、この光景には妙な既視感があります。
はて、どこで見たのでしょうか。

それは、鉄道ジオラマの駅の光景でした。
わたしはジオラママニアではありませんが、現実よりも現実を模すという、倒錯した感覚が好きです。
目の前の東京駅は、原寸(1/1)のジオラマのようで、周囲のクルマも駅に向かう通行人も、模型のような錯覚に陥ります。
それはきっと、周囲が暗く、ライトがオレンジゴールドで、駅舎が古典的なレンガ造りだからでしょう。
そこだけが、浮き出たような世界です。




東京駅丸の内北口です。
南口と同様、天井はドームになっています。
北口から横断歩道を渡る場所は、日本で一番有名な朝の通勤シーンです。
映画やテレビで映される(イメージとしての)通勤シーンは、大概この横断歩道です。

東京駅は開業当時は三階建てだったそうです。
空襲で壁だけを残して焼失し、再建されたのが現在の二階建てです。
それを元の三階建てにする計画が進行中で、2011年度には復原されるようです。
この計画には、ステーションホテルやステーションギャラリーのリニューアルも含まれています。
八重洲口も大丸が建て変わるので、東京駅は大きく変化することになります。

今のステーションビルではなく、昔建てられた駅(Station)には風情があります。
別れや旅立ちがあり、駅が人生の節目の場所になりました。
今は情報の発達で、携帯もあればインターネットもあります。
別れの直後に、携帯でテレビ電話なんてことも簡単です。
又、交通の高速化は遠いという概念を変えてしまいました。
別れや旅立ちの重さが、確実に軽くなっています。
それでも駅舎が昔ながらなら、そこにドラマの一編でも生まれそうな気がします。


東京の夜景といえば、東京タワーとレインボーブリッジから景観が有名ですが、東京駅も幻想的な美しさです。
もし機会がありましたら、是非ご覧になって下さい。