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京橋三丁目


藍画廊は東京都中央区京橋三丁目にあります。
京橋は銀座の隣町で、境に高架の首都高速道路が通っています。
銀座がショッピングの街だとすると、京橋はオフィス街で、狭い地域に大小の会社があります。
三丁目のランドマークは国立近代美術館フィルムセンターですが、企業のショールームや警察博物館などもあります。



藍画廊の道路側からの入口です。
正規の入口はビルの中にあります。
ビルはブラザーミシンの東京本社のあるビルで、三角形の形をしています。
この道路の向こうで交差しているのが中央通りで、銀座を突き抜けている幹線道路です。

さて、藍画廊のあるブロック(区画)の隣りが(上の画像でいえば、向かって左側ですが)、最近騒がしい。
大掛かりな解体工事が行われていて、建物が徐々になくなっている様子です。
気が付いてみると、下の画像のようになっていました。



空地ですね。
広〜い、空地です。
画像中央上で、照明で白い四角になっている所が、藍画廊です。
一ブロック(120×20m)の四分の三が、すでに空地です。
以前はギッシリとビルが建ち並んでいた場所です。



今度は、藍画廊方面から眺めてみました。
向こうに見える高層ビルは八重洲の再開発地区です。
空地にプラスティックの半透明の柵が立っていますが、その向こうはコインパーキングで、大手広告代理店が既に退去した跡です。

要するに京橋三丁目の再開発ということですが、マクロ的には東京駅周辺の丸の内、八重洲地区再開発の一環です。
ええ、六本木に負けまいとする大手デベロッパーの再開発です。
元々が住民のほとんどいない地区でしたが、小さな商店や飲食店はありました。
この再開発で壊滅状態となりました。



ブロックで辛うじて残っている建物数棟です。
藍画廊の前に辺ります。
(コインパーキングの空地を挟んだ反対側です。)

この建物も入居者の転居先が決まれば、直ぐに取り壊しになると思います。
中央右の細長い変則六角形のビルは、幅が狭いビルで、側面を見るのは初めてです。
隣接する建物がなくなると、建物の隠されていた姿が顕になって、意外な発見があります。



わたし自身は、再開発には興味はありませんが、空地には魅かれます。
今回レンズを向けたのも、空地が好きだからです。

建物が建つと、当然ですが、眺望が悪くなります。
逆に、既に建物があった所がなくなると、眺めが急に良くなります。
住んでいた方には万感の思いがあり、複雑な心境と察します。
わたしの長く育った場所も現在空地で、その場に立つと、何ともいえない感情を持ちます。
しかし、部外者には一時的な眺めの良さ、解放感のようなものをもたらします。

空地になると、それまでの人間の営為は無に帰します。
土地は剥き出しになって、大袈裟にいえば、大昔の状態を想像させます。
一面が野原や湿地であった時代を。
(埋立地であれば、人間の営為の跡になりますが。)
たとえ、一時的な出来事とはいえ、そのような想像が湧いてきます。

戦後の焼け野原に、妙な解放感があったのは、政治的抑圧が外れた所為ばかりではありません。
遠くまで見渡せる風景にも、解放感があったと思います。
焼け野原にしてしまった人間の残虐さと同時に、人間の卑小さを感じ取ったと思います。
都市が崩壊し、一面の野原となった大地に、何ともいえない懐かしさと解放を感じたに違いありません。



藍画廊の内部です。
誰かが忘れた傘なのか、それとも画廊の置き傘なのか。
傘が、通りの方を思案気に見ています。
どうしたのでしょうか。

一番上の小さな画像をご覧下さい。
藍画廊と同じブロックの工事現場です。
この辺りでも解体がチラホラあります。
ここもロクでもない再開発が始まるのでしょうか。

多分、傘はそれを心配しているのですね。
恐らく、当分は大丈夫でしょう。
もしそうなったら、その時です。
転居先を見つければ良いのですから。
ですから、傘はよけいな心配をしないで、天気だけ気にかけていて下さいね。