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探偵物語(26)


探偵は、街の生き物です。
街を這いずり回って、糧を得ています。
わたしは街で生まれ、街で育ちましたから、特に不都合はありません。
華やかさも、薄汚さも、わたしの一部になっています。

わたしが切り取る光景の、大半は街です。
わたしの関心は、やはり街にあるからです。
街の表層の奥にあるものや、堆積された時間にレンズは向けられます。
あるいは、街の思わぬ表情にも心を動かされます。

その点、自然はわたしの守備範囲外で、勝手が違います。
(もっとも、ありのままの自然など、地球上にはほとんど存在していません。)
せいぜいが、自宅周辺の河原や公園で散策するのが、自然との付き合いです。
河原や公園は人工的な自然ですが、それでも雑草たちには、自然のDNAが残っています。



冬のダンスに興じる、雑草たちです。
デスクワークの合間に、自宅近くの河原で撮影しました。

葉が枯れて、すっかり細身になったダンサーの群舞。
冬としては暖かな午後に、手足を思いきり伸ばして、踊っています。
左側の細かな黒点の数々は、つられて踊る小さな虫たち。
春に春の踊りがあるように、冬には冬のダンスがあるのですね。



天候が曇天に変わり、隣りでは、ススキがソロを執っています。
長い髪のダンサーで、頭(こうべ)を垂れて、動きを止めています。
しばらくして、髪を後ろにはね上げ、風にまかせて上半身を揺らせました。

河原に舞台は無数あり、それぞれが自由気侭に冬のダンスに興じています。
わたしは中腰になって、面白そうなステージを探しました。



こんなダンスは、いかがでしょうか。
中央のダンサーが、鶴のようなポーズで踊っています。
しなやかな身体の曲線が、見事です。
シンプルな衣装も効果的。
舞台は、土手の傾斜した場所にありました。

河原の競演は、
次回に続きます。