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 探偵物語(3)


今回は、シャレにならない話です。

わたしは探偵です。
今は実家のあるダイナマイト・シティに住んでいます。
年老いた両親が住む家の別棟に独居しています。
事件は昨日起きました。

朝早く、わたしは電話で起こされました。
わたしのベッドの横の床には、たまたま所用で来た別居中の妻がグッスリ寝ています。
(別居中というのが探偵らしくて良いのですが、残念ながら、単に仕事の都合で別居しているだけです。)
受話器を耳に当てると、「泥棒が入った」という母の沈んだ声が飛び込んできました。
急いで顔を洗って、母屋に駆けつけました。



普段は閉切りの玄関脇の窓が開いています。
後で分かったことですが、ここが侵入口でした。
犯人はここから入って、直のダイニングの奥にある茶の間を物色していました。
両親は玄関から見て左側の部屋で寝ていました。
(玄関の柱が破れているのは、ここで家のネコがツメを研ぐからです。)



茶の間です。
戸棚の引出しを全部開けて、物色した跡です。
しかし、ここには犯人の目指すものはありませんでした。
この部屋は六畳で、戸棚とタンスと仏壇、炬燵があります。



戸棚の反対側です。
仏壇の引出しに、生活費を入れておいた現金が置いてありました。
(実に分かりやすい場所ではありましたが。)
見事に、それを持っていかれたのです。
犯人は、それ以外の小銭には目もくれず、銀行の紙袋ごと持ち去りました。

そうこうしているうちに、警察官が到着しました。
総勢八人くらい。
いやに多いなと思ったら、この辺の家四、五軒がやられていました。


さて、シャレにならない話はここからです。
両親の家の裏は葡萄畑で、その向こうにはダイナマイト警察署があります。
直線で計れば、五、六十メートル。
やられた家の内の一軒は、ダイナマイト警察署の隣りです。

ダイナマイト警察署もナメられたものです。
ナメられたのは警察署だけではなく、このわたしも、です。
わたしは探偵ですから。
ヘボとはいえ、探偵の家に泥棒が入られるとは。
同業者にバレれば笑いものですし、世間に知れれば依頼は皆無になってしまいます。
まったくもって、ナメられたものです。


左は茶の間の窓の外の通路で、ここから逃走したようです。
右は家の裏に置いてあったトタン板で、ここに銀行の紙袋が棄ててありました。

犯人はダイナマイト・シティを甘く見たようです。
市町村合併で現在の名前になったダイナマイト・シティですが、この市名には二つの意味があります。
一つは地方自治の起爆剤になるということ、もう一つは、この地が昔から気性の荒いことで有名だったからです。
怒らせると際限なく爆発するのが、ダイナマイト・シティズン。

コケにされたダイナマイト警察署が黙っているでしょうか。
既に署内は爆発寸前と聞いています。
わたしはネコの探索で忙しいので、すべてをダイナマイト署員にお任せしました。

捜査員が引き上げて一段落したころ、気持ちも少し落ち着いてきました。
危害を加えられなかったのが不幸中の幸い、などと話していたら、母が急に保険のことを思い出しました。
火災保険に加入していたので、盗難にも適用される可能性があります。
保険屋に電話してみると、やはり保険で補填されるとのこと。

保険屋の話では、申請には現場の写真が必要とのことです。
それで、撮影し、今回の更新となりました。
ええ、申請用の写真の流用です。
申し訳ありません。